四竜帝の大陸【青の大陸編】
意外なことに。
30分程で彼は戻ってきた。
バーンと音を立てて扉を乱暴に開き、キッチンに突入してくる。
走ってきたのか、結っていた青い髪が乱れていた。
竜帝さんは、頭を両手でがしがしと掻き毟り叫んだ。

「がぁあああー、むかつく~! じじい、おちびと一緒に伝鏡の間に来てくれよっ、俺様じゃ話になんねぇ~。<黄>も<赤>もおちびを見せろ会わせろってごねやがるっ!」

さっき使ったお皿を洗っていた私は、言葉を失った。
みっ、見られたぁ~!
ハクちゃんにつかまれてお皿を洗う、この恥ずかしくて情けない姿をー!

「断る」

うろたえ、あわあわしてお皿をシンクに落として割った私とは対照的に、ハクちゃんは全く動じていなかった。

「なんでだよ!?」

竜帝さんを見ず、私を床に下ろし。
私からゴム手袋を外しながら、ハクちゃんは言った。

「嫌だからだ。りこ、手を……ああ、良かった。怪我はしておらんな。<青>よ、割った皿でりこが怪我をしていたら、この城を潰していたぞ」

私の両手を確認したハクちゃんは、竜帝さんから隠すかのように私を背中のほうに移動させ……。

「おい、あと一歩で2ミテを越える。首を落とされたいのか?」

私はぎょっとしたけれど、竜帝さんはひるまなかった。

「首~? 目玉をえぐるんじゃなかったのかよ!? どうせ、おちびの前じゃやんねえクセに。ヴェルじゃ話になんねぇな。おい、おちび。お前だって他の竜帝を見てみたいよな? ほら、じじいに‘お願い’をするんだ。他の竜帝に会ってみたいって……このじじいは、基本的にはおちびに逆らえないからな」
「え? は、はい」

私も他の竜帝さん達には興味津々だけど。
ハクちゃんがどうしても嫌なら、諦める。
ハクちゃんの気持ちを最優先してあげたいし、我侭を言って優しいこの人を困らせたくない。
でも、竜帝さんもお手上げ状態みたいで気の毒だし……。

「ハクちゃん、なんで嫌なの?」

広い背中をつんつんして、訊いてみた。
 
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