四竜帝の大陸【青の大陸編】

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「あら。ヴェルって、怒れたのね……意外だわ」

クッションの下から出した飾り羽のついた扇子で口元を隠して、<赤>の竜帝さんが言った。
<赤>の竜帝さんの前では、ハクちゃんは怒ったことが無かったってこと!?

「きゃーあははははっ! ざまーみなさい、<青>! あんたなんか、イドイドにずたぼろにされちゃえっ……きゃはは、あはっ!」

レモン色の○家○ー子っ!
まさかわざと……最初からハクちゃんに、竜帝さんが怒られるのを狙ってたの!?

「て、てめぇ! 俺様は、こないだぼろぼろにされたばっかなんだよ! これ以上やられたら、さすがに死んじまうだろうが!」

ハクちゃんは私を抱いたまま、女神様に向かってゆっくりと進んだ。
その動きに合わせるかのようにきらきらした小さな光の粒が、緩やかに流れる。

「だめっハクちゃん、やめて! 竜帝さんにもう酷いことしな……ハク?」

ハクちゃんの意識を私に向けさせようと、白い頬に両手を伸ばしたけれど。
その両手が頬に届く前に、ひんやりとした大きな手が私の後頭部に添えられて……顔をハクちゃんの肩に軽く押し付けられた。

え?
見るなってこと?

「ぎゃああああ!? 何すんだ、くそじじいっやめろ!」

ハクちゃんの長くてでっかい足が狙いを定めたのは、女神様じゃなかった。

「や、やめろ! それを蹴るなら、この俺様を蹴ってくれぇええ~!」


ドババッシャーン!
 

まるで。
大量の水が天井から落ちてきたような音がした。
何があったか確認したいのに、ハクちゃんの大きな手に頭を固定されてしまい見ることが出来なかった。
女神様は無事!?

「うぐぎゃあああー! <黄>の電鏡がああ~ぁ、1400000000ジンが割れちまったぁあああ!……げほっ、げほほっ」

竜帝さんの悲痛な叫びから彼の無事を知った。
ハクちゃんはレモン竜帝さんの映っていた電鏡を、蹴って……割った?
さっきのは、伝鏡が割れて粉々になった音?

「ハ……ぷへべっ!?」

喋ろうとしたら、さっきより強く押し付けられたので変な声が出てしまった。

「りこ、我から顔を離すな。細かな破片が舞っている。吸い込むと肺が焼けるぞ」

見るなじゃなく、破片を避けるためだったってことですか……肺が焼ける!?
ちょっ……女神様がさっきから、むせてるんですが!

「げほほっ、げふ! おちび、眼をつぶれ! 絶対に開けるなよ!? 息は浅く、最小限にしろ! ヴェル、さっさとおちびを室外に連れて行け! これは人間には、やばいんだっ……げほほっ」

私は竜帝さんの指示通りに、眼をぎゅっと閉じた。

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