四竜帝の大陸【青の大陸編】
ここの寝具は私に用意されてたものと、まったく違う。
私に用意されていたのは肌触りの良い、温かな素材だった。
柔らかな毛布に、ふわふわの羽毛布だったのに。

ハクちゃんが私を包んでくれたこれは、真っ白で艶があって……綺麗な生地で作られていた。
見た目はとても綺麗。
でも。
気温の低い帝都で使うような生地じゃない。
使われることを前提に用意したものとは、思えない。
ハクちゃんは膝立ちのまま……真っ白な薄い掛け布団を隙間が無いように前でしっかりと合わせて、私を包んでくれた。

ハク。
これ、とっても冷たい。

「……うん、ありがとうハク。もう、寒くない」

こうしていてもちっとも、暖かくないの。
でも、言えない。 
靴を脱いだら揃えるんだって事を教えてあげたように、教えてあげなきゃって……本当の事を言うべきだって分かってるのに。
意気地なしの私は、また嘘をついてしまった。

「我に人間のような体温があれば、この身体に抱いて暖めることもできるのだが。我が直に抱いては、りこは冷えるだけだからな」

ああ、だから。
今朝、貴方は竜体で枕元にいたの?
眠る前は、私を腕に抱いていてくれてたのに。
目覚めたら、貴方は隣にいなかった。
 
貴方は昨日、服を脱がなかった。
濡れた外套だけ、放り投げて。

そんなに、私と肌が触れ合うの……嫌だった?

「ハク……」

そんなに、私に触られるのが怖かった?

私は何度も、言った。
貴方の冷たいその手が、大好きだって。

「まだ寒いのか? ふむ、いったん戻って防寒着を準備し……りっ!?」

私の言葉は、信じられなかった?
私の心は、伝わっていなった?

「な……涙が出そうだぞ! ど、どうしたのだ……もう寒くはないのだろう!? ……術式で全て遮断したつもりだったが、もしや電鏡の欠片が眼に入ったのかもしれんっ! 泣くほど痛むのかっ!? い……医者をっ」

違う、そうじゃない。
足りなかったんだ。
もっと、言ってあげるべきだったんだ。
 
貴方のひんやりした手が、大好き。
貴方の冷たい身体も、とても愛しいと。

ちゃんと、はっきり言うべきだった。



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