四竜帝の大陸【青の大陸編】
な、なるほど。
こんなに切れ味抜群、伸縮自由自在の爪だったなんて。
ハクちゃんが自分の爪を気にして、手をにぎにぎしちゃうわけよね……。

「すごい? そうか。うむ、この爪がりこの役に立ったうえに褒めてもらえて、我は良い気分だ」

オレンジのかぼちゃにちょこんと腰掛けて、短い足をぷらぷらさせたハクちゃんが。
嬉しそうに、そう言った。

爪。
ハクちゃんは、いつも爪を気にしている。
鋭い竜の爪だからって……。
なんか、こう……胸がじ~んとしてしまう。

「ハクちゃんの爪、とっても綺麗で素敵だと思う。私は好きよ……ありがとう、ハク」

かぼちゃに座った可愛い旦那様に、思わずキスしてしまった。

「俺様、ここにいんだけど?」
 
あ、そうでした。
つい、その……うわあ、いつもの習慣でついついしてしまったあぁー!
呆れたように言う竜帝さんに、ハクちゃんは切り取ったかぼちゃの底を投げつけた。

「いって~、このくそじじい! なにしやがるっ」
「無粋だぞ。お前には‘デリカシー’が無いのか? さっさと作業を終えて、帰れ」

デリカシー?
ハクちゃん、貴方……デリカシーって言葉知ってたんだ。

「……お前さえいなければ。我は即、りこにお手伝いのご褒美をおねだりし、閨に直行しておるのだぞ!?」
 
閨?

閨……まさかっ!?
ぎゃあああ~、なに言ってんのよぉ。
今の貴方は念話で会話してるから、閨なんて難しい言葉使ったって私にも意味が分かるんですからね!
閨って、つまり……べ、ベットってことでしょうがっ!

「ハ……ハ、ハクちゃんっ! 何言ってんのよ!?」

一昨日、ちゃんと2人で話し合いをしたじゃないですか!
人間の私には竜族のつがいみたいな、濃密でハードな蜜月期をハクちゃんと過ごすのは無理でして。

私もそれに関しては、ハクちゃんに申し訳ないと思っていたから……かなり恥ずかしかったけど、和解案(?)を提案したのにぃ~。

「もお~っ……デリカシーが無いのは、ハクちゃんだよ!」

真っ赤になっているであろう顔を隠して叫ぶ私に、竜帝さんは嫌そうに言った。

「おちび。誤解されるのが嫌だから言うが。良識ある俺ら竜族と、このじじいを一緒にすんのは勘弁してくれよ? このじじいははっきり言って、変人……別の生き物だと思ってくれ」

うう、竜帝さん。
了解です。
私も薄々、そう感じてます。
今まで会った竜族の人達と比べて、あきらかに……。
ハクちゃんって、ちょっとへ……じゃなくて、個性的ですよね?



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