四竜帝の大陸【青の大陸編】
「……ハロウィンかぁ」

ハロウィンはお盆に近いものなんだと、妹が言っていた。
日本では先祖や亡くなった家族が迷わないで帰ってこれるように迎え火をするのに、西洋では霊を追い払うためにランタンを用意するんだって言っていたような……。

死んだ人の魂、霊。
私……死んだら、どうなるのかな?
元の世界にある死後の世界に、強制連行?
元の世界。
ここじゃない世界。

ハクのいない世界。

嫌。
絶対に、嫌だよ。
離れたくない、この世界から……ハクちゃんから離れたくない!
こんなに貴方への未練たらたらな、焼きもちやきの私が死んだら。
きっと、お化けになってしまう。
もしも。
お化けになった私を追い払うために、貴方が他の誰かと作ったジャック・オー・ランタンを用意したら……。
ううっ、凹むどころじゃない。
号泣ものだ!

妹のりえは、疑問を感じたらとことん調べるほうだったから話がちょっとマニアックというか、難しかった。
私はハロウィンの飾りは可愛くて、大好きだったんだけど。
由来にはあんまり興味が無かったから、ほとんど聞き流してしまっていた。
真面目に聞いておけば良かったな。
霊を追い払うためのかぼちゃ……それって、私の聞き間違えかも知れないし。
ごめんね、りえちゃん。
せっかく教えてくれたのに……。

ごめんね。
いなくなって、ごめんなさい。
私はりえちゃん達より、ハクを選んでしまったの。
許してなんて、言えない。
家族を捨てた私には、許してなんて言う資格は……。

「うふふっ……ナスときゅうりのお馬さんより、ここにはかぼちゃが似合うね」

泣くな、りこ!
顔に出しちゃ、駄目。
ハクの前では……。

「ねえ、ハクちゃん。来年はカイユさんとダルフェさんと……ジリギエ君も一緒に皆でランタンを作ろうね。黒の竜帝さんの大陸にも、オレンジ色のかぼちゃがあるといいな」

笑おう。
私は、笑える。
貴方の隣にこうしていられることが、私の幸せだと気づいたの。
私は、幸せ。
とても、幸せ。
貴方が私の‘幸せ’なのだから。
だから、笑える。

私は、笑える。


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