四竜帝の大陸【青の大陸編】
鯰の餌を温室に置き、居間に戻ってきた<青>はソファーに腰を下ろした。

「夕べ、作ったんだ。おちびにやろうと思って、持ってきた」

<青>は持参した紙袋を逆さにし、中身をテーブルにばら撒いた。
丁寧に個別包装された焼き菓子の山の中に、見覚えのある四角い物体があった。

「なあ、じじい……おちびがいねぇから聞くけどよ」

青い爪を持つ指で焼き菓子をどかし、四角いそれを脇へと置いた。
<青>の眼は、菓子を見ていた。
数を確認しているようだった。

「あいつの身体に何した……何してるんだ?」

りこの体に、何をしているかだと?
心当たりが多すぎて、返答できんではないか。

「何とは、なんだ? それでは分からん。具体的に言え」

<青>は続けた。
焼き菓子を見ていた青い眼を、我に向けて言った。

「シスリアが、おちびは異常だって言っている。短期間であれだけ会話ができるなんて、あり得ないと。……俺様もそう思ってた。はっきり言わせてもらうが、おちびの知能は人間としては並みだろ? だから書き取りは6点だった。まあ、6点だと並以下の可能性も……睨むな、冗談だ」

セイフォンを出てから、りこは格段に会話が上達した。
正しくは。
我が傷つけてしまった肉体を、メリルーシェで[再生]してから。

「シスリアは初日の段階で、おちびが特に優秀でもない普通の人間だと判断した。だがな、会話に関しては疑問を持ってた。だから今回の会話試験には、学習院の卒業学年に出すような単語も混ぜた。あいつが知らないはずの単語を使ったんだ。それなのに会話が成立しただと!? どう考えたって、変だろうがっ! ヴェル、おちびの頭になんかしたのか!? 脳をいじるなんて、危険すぎる。これ以上はやばいだろうがっ」

りこは我と同じ金の眼になった。

「脳を直に触るなど、りこにはせぬ。我はお前とは違う。組織を潰さずに、脳をいじることは出来ぬからな」

それは。
我が望んだものではない。
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