四竜帝の大陸【青の大陸編】
「それと……カイユの様子を見に行ってたセレスティスが、戻ってきた。明後日には帰ってこれるってさ。俺様はちょっと心配だったんだが、子は全く問題の無い普通の個体だった。<色持ち>じゃない。<竜騎士>かどうかは、まだ暫く様子を見ないと分からないな」

カイユとダルフェ。
支店での性交後にりこの会話が不自然なまでに上達しようが、あの2人はそれに関して何一つ我に言わなかったな。
「そうか。我からりこに伝えておく」

カイユ達が戻ってきたら、りこは喜ぶだろう。
だが。
りこは竜の子を……【弟】を見て、どう思うのだろうか?
この世界の人間のように嫌悪するのか、それとも……。

「<黄>用の電鏡、やっと新しいのを用意できた。さっき設置作業が終わったんだ。今回は予備のものが役に立ったけど、あれだけのもんはめったにねぇんだ。二度と壊すなよ? <黄>……試運転兼ねて連絡したら、ヴェルを怒らせちまったってわんわん泣いてたぜ? 謝りたいって言ってた。俺様にはごめんのごの字もねぇけどよ」

<黄>か。

「怒ってなどいない」
あれのことなど、思い出しもしなかったな。

「じゃあ、後で<黄>に顔見せてやれよ」
 
りこは、他の竜帝に会うのを楽しみにしていた。

「あれに会う気は、我にはない」

だが。
<黄>はりこの‘存在’を無視した。
我のりこを。

「謝罪は不要」

我の妻として他の竜帝達に会える事が嬉しいと。
鏡に向かい、紅をひきながら言っていた。
自分の髪を梳かした後、りこは我の髪を梳かしてくれた。
自分自身にしていたよりも長い時間をかけ、丁寧に梳かしてくれた。
そのりこを。
<黄>は見下し、最初からその存在を‘無視‘したのだ。

りこが我のつがいであることを、否定した。
認めようとしなかった。
りこに話しかけていたのではない。
あれはりこを拒絶していたのだ。

「我にリンエルチィルは[不要]だ」

<青>が息を呑んだ音がしたが、言葉を発することは無かった。
リンエルチィルを廃し、次の<黄の竜帝>に替えるのは簡単だ。

<処分>、すればよい。
だが、時期が悪い。
ベルトジェンガが、もうすぐ死ぬ。
代替わりをほぼ同時で行なわせるのは、今の我にとって少々都合が悪いのだ。
 
  

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