四竜帝の大陸【青の大陸編】
「うん、美味いじゃないの! なんつうか……あったかい味のするケーキだねぇ~。俺、好きだなぁ。丸ごと食いたいくらいだ。ありがとな、姫さん……と、旦那。旦那?」

ハクちゃんはシフォンケーキにぐさっとフォークを突き刺して、ぐりぐりと生クリームに押し付けていた。
そんな風にしたら、せっかくのふわふわ感が台無しなのに!?

「食え」
「え?」

あ~んじゃなく、食えって言った!?

「ハクちゃん?」

ふわりと浮いたハクちゃんが、カイユさんに捕獲されたジリギエ君の口元にシフォンケーキを差し出した。
私に言ったんじゃないのね、びっくりしたぁ~。
ジリギエ君はぴたりと鳴き止み、固まってしまったように動かなくなった。
宝石のような緑の瞳が突き出されたケーキと、それを突き出している白い小竜を交互に見た。

「食え」

ハクちゃんはジリギエ君の口を左手でぱかっと開けて、シフォンケーキをっ込んだ。

「美味いか? 幼生よ」

ハクちゃんはフォークをくるくると回しながら、言った。

「お前は我のりこの<竜騎士>だ。たくさん食い、強くなれ。四竜帝共を討てるほどにな」

ジリギエ君がごっくん、とケーキを飲み込む音がした。

「旦那ぁ。あんた四竜帝と戦争でもおっぱじめるつもりっすかぁ~!? まあ、確かにそいつは強くなりますよ、なんたって俺とカイユの子ですからねぇ」

ダルフェさんが楽しげに、とんでもないことを言った。

「ああ、そうだ! そのうち俺らで、世界征服でもしますか? とりあえず、セイフォンぶっ潰してのあの皇太子君を血祭りにしましょうやぁ~! はははっ、想像するとかなり面白いっすねぇ~! 舅殿も連れて、派手にやっちまいましょうぜぇ!」

ダ、ダルフェさん?
そんな物騒な事を、なんでとっても楽しそうに言っちゃうのですか!?
今のは悪の手下が、親分さんの前で言うようなセリフでしょう?

「まあっ。それ、良い考えだわ。私も賛成よ? 父様も喜ぶわ。あ、セシーは私の獲物よ。あの糞生意気な女はこの手で……うふふ」

カイユさん!?
賛成しちゃうんですか!?
しかも、それじゃまるで悪の組織の女幹部のようです!
ああ、指をぽきぽきしないでぇ~、洒落になりません。

「ふむ。我は別にかまわんが……りこはどうしたい?」

ハクちゃん、なんで私にふるんですかあぁぁ!?
そこは即、否定すべきでしょうが!
今の会話、まずいでしょう!?
このままじゃ私達、完全に悪役……世界征服を目論む魔王様御一行(しかも子連れ)になっちゃう!

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