四竜帝の大陸【青の大陸編】
「おね……お願い、カイユ」
 
私はカイユさんにしがみ付いた。
アオザイに似た衣装はシルクのようになめらかな生地で、しっかり掴まらないと……今の私のこの手では、するりと滑り落ちそうだった。

「カイユ……カイユ。お医者様を呼んでよ、お願い! あのね、私……カイユがいない間……ハクちゃんと……身体に負担がかかるから毎日したらいけないって、ちゃんと断りなさいってカイユに言われてたけどっ! ご、ごめんなさいっ。でも……だって、だって……赤ちゃん、早く欲しかったから」

自分の声が、他人の声のように聞こえた。

「ごめんなさい。私が悪いの……ハクちゃんに、私がお願いしたの……」

手が、震えていた。
足に力が入らなかった。
立ってられなくて、両膝を床についてしまった。

「ハクちゃんは子供の話をしなかったけど、内心は早く子供が欲しいんじゃないかと思って……竜族は結婚したら子供が……だから、だから私……人間の私……ダルフェと同じで時間が……だから……急がなきゃって……」

どうしちゃったの、私……。
身体、変。

誰かが私の心臓を、がんがんと叩いてる。
頭の中がぐちゃぐちゃのばらばらで……気持ちが悪い。

なに、これ?
助けてカイユさん、カイユ……!

「カイ……カイユ! あぁ、私……生理が遅れて……そうよ、私は赤ちゃんが出来てるかもしれない……は、早く……早くお医者様、お医者様に診てもらわなきゃっ!」

大変。
お腹に赤ちゃんがいるかもしれないのに。
ハクの赤ちゃんが。
私の赤ちゃんが。

いなくなちゃう。

いなくなっちゃう?

ハクの赤ちゃん、いなくなっちゃう!?

「トリィ様? しっかりして……しっかりなさい! どうか、カイユの話を……母様のお話を聞いてちょうだいっ! とても大事な事なのよっ!? 人間をつがいにした竜はっ……ぐっ!?」

ハクちゃんの左手が。
カイユさんの首を正面から掴んだ。

「黙れ、カイユ。それ以上は許さん」

私の肩を掴んでいたカイユさんの手が離れ、ハクちゃんの手の甲に爪を立てた。
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