四竜帝の大陸【青の大陸編】

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ハク。
貴方は竜で、私は人間。

「う……そ……」

子供が出来ない?

なによ、それ!?
だめ、そんなのだめよ。

貴方に子供を遺してあげなきゃなのに。
私が貴方にしてあげられる、たった一つの……。

「ハ……ハクちゃん、ハク、ハク! ねえ、体液で身体のことがいろいろ分かるって前に言ってたよね!? わ……私っ、もしかして妊し……」
 
私、貴方の子供が欲しい。

「りこの体液に妊娠の兆候などない」

ハクちゃんは持っていた外套を無造作に床へ放り投げた。
いつもはお行儀が悪いよと注意する私だけれど、今はそれどころじゃなかった。

子供。
ハクと私の赤ちゃんのこと。

私は家族を失った。
でも、この世界で新しい家族を作れる……家庭を持って、家族を作る。
そう考えていた。
 
私とハクと子供達。
ハクの子供なら女の子でも男の子でもとってもかわいくて、美人さんにきまってる。
何人だって……ハクが欲しいなら何人だって、頑張って産んでみせるって考えていた。
子供達に囲まれた賑やかで楽しい毎日が……幸せな日々が待っている。

そう思っていた。
思い込んでいた。

「で、でも! わ、私は異世界人なのよっ!? この世界の人間じゃないんだから、可能性があると思う! 私だったら妊娠出来るかもしれないっ……ね、そうでしょうハクちゃん?」 

時間がないの。 
私は人間だから。

人間の私が、竜族の貴方と一緒に過ごせる時間は何年?
50年?
60年?
それとも、もっと……短いの?

「諦めないで、2人で頑張ろう!? 何かいい方法が見つかるかもしれないし……すぐには無理かもしれないけれど、いつかは貴方の赤ちゃんがっ!」

貴方にとって。
きっと、それはとても短い時間だから。

「人間が竜の子を産む【方法】など……存在せん」

ハクちゃんは床に座り込んでしまった私を見下ろしながら、顔に流れ落ちる長い前髪を鬱陶し気に左手でかき上げた。

「人間と竜は、種としてかけ離れすぎているのだから」

ハクちゃん、なんで?
なんで、なんで……そんなこと言うのよ。
一緒に頑張るって、言ってくれないの?
カイユさんと同じように、夫である貴方まで……可能性を否定するの?

「我にはりこに、我の子を産ませることはできん」

いつも無表情な貴方だけれど。
こんな時まで、そのままなの?
ちっとも辛そうじゃない、悲しそうじゃない。

なんで貴方はそんなに冷静でいられるの!?
私を愛してるって言ってたじゃない!
私に自分の子供を産んで欲しいって思わないの!?



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