四竜帝の大陸【青の大陸編】
私なんかを奥さんにして……もしかして、後悔していたの?
だからそんな酷いことを言うの?

だからそんな眼で、私を見るの!?

「ハ……ハク……」

私はもう、違うの?
私はもう<我のりこ>じゃないから?

「な……何言ってるの!? わ、私は貴方以外となんてできなっ……」

私を。
私を嫌いになったの?

私を、捨てるの?

「そうか? そんなはずはないと思うが……蜜月期だろうが、我は他の女ともできるぞ? 我は普通の竜族とは少々……かなり違うからな。今までだってそうだった。女なら誰でも……美姫だろうが醜女だろうが、我は全く気にならん」

他の人……女性なら誰でも?
蜜月期の雄竜はつがいのことだけ盲目的に愛するんだって……カイユさんは私に、そう教えてくれたのに。
普通の竜族じゃない貴方は、私……つがい以外が相手でもかまわないってこと?
蜜月期の強い欲求を満たしてくれるなら、私じゃなくてもいいの!?

「う……うそでしょ? そんな……そ……」

なぜ……どういうこと?

「嘘? 我が嘘をつく必要など無い。ふむ……証拠が必要なら、りこの目の前で試してもかまわんぞ? 幼女だろうが老婆だろうが、りこの望みの女で試してやろう」

竜族はつがいの相手だけをずっと、たった1人だけを愛するんだってカイユさんに聞いてたのに。
ハクが他の竜族とはいろいろ違うっていうことは、特異な存在だっていうのは分かってた。
でも、でも……!

「なに言っ……目の前? 証拠? や……やめ……てよ、やめてぇ!」

私は自分の両耳を手で塞いだ。
ハクの声が聞こえないように強く、強く……もう聞きたくないっ!

「や……やめてっ! やっ……も……わた……無……理っ」

いつだって、貴方は優しかった。
他の人には冷酷なところが確かにあった、乱暴で残酷な行動をとることもある人だと知っていた。
でも。
私には。
私には、優しかった。

私だけに、優しいーーそれが、とても嬉しかったのに。

独占欲を隠さず示す姿に、こんな私でも貴方に愛されてるのだと安心できた。
自分に自信が無い私にとって貴方のその束縛は、心地良いほどだった。
私は貴方に強く愛されているのだと、感じられたから。

なのに。
どうして。
どうして?

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