四竜帝の大陸【青の大陸編】
「う、そ。うそ……嘘」
都合の良い、幻聴?
私、とうとうおかしくなっちゃったの?
「りこ」
昨夜、温室の池を2人で覗いた。
夜行性のナマリーナは、昼間より夜に動くから。
夜のナマリーナを観察することが、すっかり日課になっていた。
心配性の貴方は私が池に落ちたら大変だからと、ずっと私の服を握ってた。
水面をゆったりと泳ぐナマリーナの大きな身体が、池に映っていた月を揺らしていたっけ……。
「りこ。我のりこ」
ねえ、ハク。
今夜もまた、2人でナマリーナを見に行ける?
明日も明後日も。
「りこだけだ。貴女がいてくれれば……他はいらない」
私は貴方と過ごせるの?
「でも、でもハク……竜族にとって、子供はとても大切な……。貴方の赤ちゃ……産めなっ……それなのに、私っ」
伝えたいこと、言いたいことが一気に押し寄せてきて、きちんと喋る事ができなかった。
たくさんの言葉が我先にと咽喉に向かったせいで、胸が詰まってしまい息苦しかった。
ひゅうひゅうと……聞きなれない音が、咽喉から出た。
焦れば焦るほど、呼吸がうまくできなかった。
もっとちゃんと喋らなきゃなのに、この大事な時になんで!?
そんな自分が情けなくて……酸素が足りなくて苦しくて、自分の胸を叩こうとした時だった。
「駄目だ、りこ。ゆっくり、息を……大丈夫だ」
ハクの手が私の髪をなで、背中を優しくさすってくれた。
いつもみたいに、いつものように。
私に、触れてくれた。
「う……うん」
貴方に、触れてもらえるということ。
それがどんなに幸せなことなのか、私は知った。
「りこ。異界人であるりこが知らぬのも当然だが、竜族と人間の交配が不可能だという事は周知のことなのだ」
私の呼吸が元に戻ったのを確認してから、ハクは話し始めた。
「あ……」
私以外は皆、知っていた?
もちろん、カイユさんも。
誰も私に教えてくれなかったんじゃなく、誰もが私はそのことを知っていると……ハクから説明されてると思ってたのかもしれない。
そうよ……。
貴方は最初から、知っていたのよね?
人間と竜族の間に子供が出来ないと知っていて、私を妻にした。
「人間の寿命は竜族に比べ短い。その分、繁殖への欲求が強いからな……次代へ繋げなければ、種は滅びる。人間の女であるりこが子を産みたいと考えるのは、生物として当たり前のことだ」
知っていて……私をつがいにしてくれたんだ。
私をつがいに選んでくれた、あの時から。
セイフォンで竜珠を私に食べさせたあの瞬間から、彼は子供をあきらめなきゃならなかったんだ。
都合の良い、幻聴?
私、とうとうおかしくなっちゃったの?
「りこ」
昨夜、温室の池を2人で覗いた。
夜行性のナマリーナは、昼間より夜に動くから。
夜のナマリーナを観察することが、すっかり日課になっていた。
心配性の貴方は私が池に落ちたら大変だからと、ずっと私の服を握ってた。
水面をゆったりと泳ぐナマリーナの大きな身体が、池に映っていた月を揺らしていたっけ……。
「りこ。我のりこ」
ねえ、ハク。
今夜もまた、2人でナマリーナを見に行ける?
明日も明後日も。
「りこだけだ。貴女がいてくれれば……他はいらない」
私は貴方と過ごせるの?
「でも、でもハク……竜族にとって、子供はとても大切な……。貴方の赤ちゃ……産めなっ……それなのに、私っ」
伝えたいこと、言いたいことが一気に押し寄せてきて、きちんと喋る事ができなかった。
たくさんの言葉が我先にと咽喉に向かったせいで、胸が詰まってしまい息苦しかった。
ひゅうひゅうと……聞きなれない音が、咽喉から出た。
焦れば焦るほど、呼吸がうまくできなかった。
もっとちゃんと喋らなきゃなのに、この大事な時になんで!?
そんな自分が情けなくて……酸素が足りなくて苦しくて、自分の胸を叩こうとした時だった。
「駄目だ、りこ。ゆっくり、息を……大丈夫だ」
ハクの手が私の髪をなで、背中を優しくさすってくれた。
いつもみたいに、いつものように。
私に、触れてくれた。
「う……うん」
貴方に、触れてもらえるということ。
それがどんなに幸せなことなのか、私は知った。
「りこ。異界人であるりこが知らぬのも当然だが、竜族と人間の交配が不可能だという事は周知のことなのだ」
私の呼吸が元に戻ったのを確認してから、ハクは話し始めた。
「あ……」
私以外は皆、知っていた?
もちろん、カイユさんも。
誰も私に教えてくれなかったんじゃなく、誰もが私はそのことを知っていると……ハクから説明されてると思ってたのかもしれない。
そうよ……。
貴方は最初から、知っていたのよね?
人間と竜族の間に子供が出来ないと知っていて、私を妻にした。
「人間の寿命は竜族に比べ短い。その分、繁殖への欲求が強いからな……次代へ繋げなければ、種は滅びる。人間の女であるりこが子を産みたいと考えるのは、生物として当たり前のことだ」
知っていて……私をつがいにしてくれたんだ。
私をつがいに選んでくれた、あの時から。
セイフォンで竜珠を私に食べさせたあの瞬間から、彼は子供をあきらめなきゃならなかったんだ。