四竜帝の大陸【青の大陸編】
「つがいになってくれたりこの望みは、なんであろうと叶えてやる。我は貴女にそう言ったのに」

知っていて。
分かっていて。
私をつがいに、伴侶にしてくれた。

「我はりこに、我の子を与えることはできぬ」

竜珠をくれたあの瞬間から。

「りこが先ほど言ったように、我は‘嘘吐き’なのだ」

貴方は、私を選んでくれてたんだ。

「あ……わた……」

私だけを、選んでくれてた。

私だけを!

なのに。
私は……!


「ご……ごめんなさっ……ごめんなさい! 私、私が……!」

私がこの世界に来なければ、貴方は他の女性と……竜族の女性をつがいにしてたのかもしれない。
私をつがいにしたから、ハクは竜族としての‘普通の幸せ’を失った。

そんな貴方の前で私は赤ちゃんを……ジリギエ君を抱いて、はしゃいで。
子供が欲しいと泣き喚いて。
ずっと子供が出来ないことを言い出せなかった貴方を、貴方の心をまた傷つけた。
酷いことしてしまった。
私はなんて酷いことを、貴方にしていたんだろう。

「ハク、ハク! わた……ハ?」

ハクの指が、私の唇をそっと押さえて言葉を封じた。

「りこ。我は我が竜で良かったと……りこを孕ませられぬことに、安堵していた」

指はそっと……肌の上を滑るように移動して、私の左の目元からこぼれる寸前の涙を拭った。

「ハク……?」

安……堵!?

「我は、子など要らぬのだ」

ハクは私を囲い込むように抱きしめた。

「こ……子など要らぬって……ハク!?」

私との間に隙間ができないように……まるで私達の間に何も、何者も入り込めないように。

「子が欲しいとは思うことが、我にはできぬ」

縋るように、強く……強く

「りこは我の……我だけのりこだ」

我だけの りこ

貴方のその言葉は。
その言葉の持つ意味は……。

ハク、貴方は。

貴方は子供を望んでなかったの?
子供達に囲まれた家庭を夢見たのは、私だけ?

子供が居れば貴方を独りにしなくてすむなんて、私の思い違い?
私に自分の子供を産ませたいなんて考えは……貴方の中には、ほんの少しも無かったの!?

「……ハク。あ…なたは」

貴方は子供を諦めたんじゃない。

「子になんの意味がある? そのよう存在は、我には邪魔なだけだ」

貴方は……。

< 489 / 807 >

この作品をシェア

pagetop