四竜帝の大陸【青の大陸編】
「……そりゃ、親子ですからねぇ」

俺達の部屋に転移させられ、取り乱すハニーをなだめて話を聞いた時。
やられた。
そう思った。
俺はあの人が、子を望んでいないと知っていた。
俺はカイユには言っていなかった……言えなかった。

旦那が<黒の竜帝>に言った言葉を、姫さんと同じ女で‘母’であるカイユに教えることは、俺にはできなかった。
竜騎士であるカイユは旦那には逆らえないはずなのに、カイユは支店で旦那に刃向かおうとした。
【娘】を傷つけられた母親としての想いが、あの時は本能を超えた。
だから、言えなかった。

カイユを……アリーリアを守るために。
俺は、カイユにはあの事を喋らない。

「我はお前達を利用する、お前も我を利用する。それでいい」

旦那はそれが‘分って’いたんだ。

この人は、やはり恐ろしい。

「お前は自分の大切な者達のために、我を……正確に言うならば我のりこを、利用する。死に逝くお前には<りこ>という我を御する……動かせる存在が必要なのだ。ゆえにお前は、りこを裏切らない……裏切れない」

そうだ。
カイユが……アリーリアが望むなら、俺は姫さんの父親を演じる。
‘2人の子’を持つ<色持ち>の竜として振舞う。
<色持ち>のつがいであるアリーリアには、‘2人の子’が必要だ。
アリーリアの心を守るためなら、俺はなんだってする。

「……旦那、あんたねぇ」

この人にとって俺達は、駒の1つに過ぎない。
うまく利用され、使われて……動かされている。
どこからどこまでが仕組まれたことで、どこまでが偶然なのか。

「顔に出ちまうほど反省してんなら、もっとそれらしくしましょうや。……あ、鍋使いますか?」
「いらん。ここにある3種の鍋は、どれも反省部屋に適しておらんかったのでな」
「え?」

あんたは俺等が居ない間に【反省部屋】に入るような事をしでかしたのかぁぁあああ!?
咽喉まで出掛かった言葉を、俺は気合で飲み込んだ。

「は……ははは、左様でございますか」

この人。

もしかして。
計算じゃなくて、行き当たりばったりなのかもしれねぇな。
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