四竜帝の大陸【青の大陸編】

82~花鎖・後編~

花鎖は、夕食前に出来上がった。
特殊な溶液を薄めていれた盥の中に、くるくるっと巻いて保管してある。
の液にこうして浸しておけば、数日間はベストな状態がキープできちゃうらしい。

花鎖は、できた。
なんとか自力で編めた。
ハクちゃんは私の両手を手の平に乗せ、撫でながら……良いできだって褒めてくれた。

ドレスはダルフェさんが娘さんの為に作っていたものを、私に着せてくれることになっていた。
2日前にサイズ合わせの為に試着したそのドレスは、優しいピンク色の可愛らしいドレス。
娘さんの為のドレス……私なんかが着てしまうなんて、申し訳なかったけれど。
とても楽しそうに袖や肩幅をチェックしていくカイユさんの顔を見たら、それを口にしてはいけないと思った。
 
準備万端……私自身以外は。
 お祭り(舞踏会?)は明日の夜だというのに、私はワルツのような優雅なンスが踊れるようにはなっていなかった。

「カイユ。……やっぱり、ここでハクちゃんとお留守番してようかな」

夕食時に、私はカイユさんに言った。
<花鎖>を作るときは夢中だったけれど、よくよく考えたら無謀というか……。
弱気になった私に、カイユさんが首を振った。

「大丈夫です。ヴェルヴァイド様がフォローして下さいますから。雄が巧ければなんとかなってしまうものですわ。ねえ、そうよねダルフェ? 心配ないわよね?」
「まあ、そうだなぁ。旦那にひっぱってもらって、まかせてりゃぁ~それなりには見えると思うよ?」

ダルフェさんは食卓の上にちょこんと座っているジリギエ君の口に、鯰の切り身を入れてあげながら答えた。
私用に小さくカットされたものと違い、大きくて骨がついたままの鯰をジリ君はもごもごと美味しそうに食べていた。
5人で囲む賑やかな食卓の上には、大きな土鍋が中央に置かれていた。

今夜の献立は、ダルフェさん特製洋風鯰鍋(私が勝手に言っている……)と食堂からいただいてきた酸味のあるパン、黄色と桃色の小菊の花サラダ。
それと食堂のチーフさんの超お勧めの一品である、若鶏の唐揚げを少々……これは竜帝さんの大好物で、彼は3食中2食は食堂の唐揚げ定食を食べているみたい。
 
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