四竜帝の大陸【青の大陸編】
ハクちゃんにダンスを叩き込むべく、竜帝さんが参戦(?)してくれた。
竜族の慣習により、つがい持ちのカイユさんは他の男性と踊るわけにはいかない。
つがい持ちのハクちゃんが、妻である私以外の女性と踊るのももちろんNG。
だから竜帝さんが女性役を押し付けられたの……ダルフェさんに。

ダンスセンスゼロっぽい私に時間をかけるより、ハクちゃんに教えたほうが手っ取り早いという『ダルフェ作戦』なのです。
あぁ女神様ぁ~忙しいのに、本当に申し訳ありません!
ダルフェさんは「俺と旦那じゃ、組み手にしかみえないからねぇ」と、女性役を女神様に丸投げしたわけでして……。
さすが女神様。
女性役を完璧にこなしている。
そして‘我は踊れんぞ宣言’を堂々したハクちゃんも、ちゃんと踊れていた。

「……ねぇ、カイユ。ハクちゃん、ちゃんとできてるよね? だから昨夜、なんとかなるって言ったんだ……」 

さっき、ダルフェさんとカイユさんがお手本で1曲踊ってくれた。
音楽は女神様の美しい御手による手拍子だった。
終わると同時に、私は拍手喝采!
2人は息もぴったりで、とっても素敵だった。
私の横に立って一緒に見ていたハクちゃんは、顎に右手を添えて。

ーー覚えた。

と、一言。
それを聞いた私は、思わずハクちゃんの顔を見上げてしまった。
白皙の美貌が私を見返し、言った。

ーーふむ……これは、ぱじゃまを着るより簡単だな。

そして。
ダルフェさんがカイユさんにしたのと同じように、優雅な仕草で竜帝さんに一礼した。
竜帝さんがハクちゃんに手を差し出し……2人は踊り始めたのだ。  

結果はこの通り。
完璧だった。

昨夜、2人でお風呂に入ってる時。
ハクちゃん、明日はいっぱい練習しようね。
2人で頑張ろう!
励まそうと思い、ハクちゃんの小さな手をぎゅっと握ってそう言った私ですが……。

ひえぇぇ~っ、頑張らなきゃいけないのは、私だけ!?
 
ハクちゃん、貴方いったいどんな脳みそしているのよ?
まあ、確かに賢そうな顔してるけどっ。

踊り終わったハクちゃんは、竜帝さんをぽいっと投げて私に訊いて来た。

「りこ、我は覚えた。偉いか?」

金のお目々がきらきらしているような……。
これは、ほめてほめてモードですね。

「う、うん偉い。すごく上手だったよ! すごいねハクちゃんって、カイ……あれ?」

カイユさんとダルフェさんは次の段取りの話をしていた。
竜帝さんは肩をぐるぐる回して、眠み~っと呟いて大きなあくびをしていた。
誰もハクちゃんが1度見ただけで踊れてしまう事に、驚かない。
 
「りゅ、竜帝さんっ。ハクちゃんて、まさか……」

もしかして、ハクちゃんはめちゃくちゃ頭良いの?
それを皆は知ってたってこと?
見た目はともかく、中身は奇天烈&頓珍漢で超天然なこの人がぁああっ!?

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