四竜帝の大陸【青の大陸編】
『閣下。鍛錬の相手が欲しいなら俺が引き受けますんで。ハニーと手合わせしたいなら出産後にしてもらえます? ま、その頃まであんたが生きてりゃの話ですがねぇ。さ、ハニーは奥で休んでおいで。あと3時間であの方が到着する。そうしたら忙しくなるからね』

長い指でカイユさんの銀髪をすくい口付け、微笑む。
ダルフェさんの真紅の髪が太陽に光でまるで燃えてるように見えて、私は眩しくて眼を細めた。
この人、眼が鮮やかなグリーンで……初対面の印象は‘クリスマスみたい’だった。
カイユさんはため息をつき、席を立った。

『ヴェルヴァイド様、トリィ様。私はこの場を離れますが“これ”がおりますから、何なりと“これ”にお申し付け下さいませ』
 
“これ”と言われたダルフェさんは、にこにこしながらカイユさんを見送った。





『残念ですわ』

セシーさんがカップに口をつけ、紅茶を飲みながら言った。

『10年前の御前試合でカイユ殿に負けてからずっと再戦の機会を狙ってましたのよ? あの方は帝都からあまり出られませんからチャンスでしたのに。トリィ様にも私の勇姿を御見せしたかったんですのに』
『セシー、強い人。戦える人ですよね? カイユも?』

ハクちゃんに吹っ飛ばされて無傷なセシーさんより強いの?
背は高いけど儚げで細身の、あのカイユさんが!?

『俺のハニーは強くて美人で冷酷で、最高なんですよ……』

ダルフェさんが私のカップに紅茶のお変わりを注ぎながら、うっとりと呟いた。

『あぁ、愛しい俺のハニー。今夜もストレス解消に俺をいたぶってくれ。殴って蹴って、踏みつけて欲しい……』

聞こえなかったことにしよう。
あ、そういえば!

『ダルフェ。後でここに来るですか? 誰?』

ダルフェさん、セシーさん、カイユさんとこちらの言葉で会話する時は【さん】をつけない。
それは不可と、拒まれたから。
ハクちゃんのつがいってポジションは、なんか……いろいろあるみたい。
【様】をやめっていうのも、聞き入れてもらえなかったし。

『あぁ、姫さんにはまだ伝えてなかったんですか? 旦那』

ハクちゃんの通り名はヴェルヴァイド(なんか凄く偉そうで派手な名前だ)。
セシーさんとカイユさんは使うけど、ダルフェさんは“旦那”って言う。
彼はハクちゃんへの言葉使い・態度も他の人達とは違っていた。

ちょっとたれ眼だけど、はっきり言って美形だと思う。
2メートルはありそうな長身に、それに見合った長い手足。
小さい顔。
何頭身っていうのかな?
モデルを通り越して、まんが体系だね。
ハクちゃんが言うには、彼の種族はこれが平均体系……。

むむ、日本人の敵です!
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