四竜帝の大陸【青の大陸編】
長身・長命でスタイル良しな種族なんて、まさに異世界!
ファンタジーです。

私はハクちゃんに、声をかけた。

「ハクちゃん。お客さんのこと知ってたの?」

黙々と字を書いてるハクちゃん手は、止めずに答えた。

「知ったというより、気付いていたが。そんなことよりもっと紙をよこせ、ダルフェ」

ダルフェさんにも聞こえるように念話したらしく、ダルフェさんが額を抑えて空を仰いだ。
私の日本語は彼にはもちろん通じないけれど、ハクちゃんは基本的には皆に聞こえる(伝わる)ように念話を使ってくれる。

『旦那、まったく使えないねぇ。姫さんは苦労するよなぁ、こんなんが相手じゃなぁ。旦那があの方の念をずっとシカトすっから、御大自ら出てきちゃったんですよ? 分かってますか、そこんとこ』

あの方?
念? 
どういうこと?

「この離宮に来てから五月蝿く念を送ってきていた。我は忙しいから相手をしなかっただけだ」
「ちょ……誰かがハクちゃんに念を送ってきてたけど、無視してたってこと? 1ヶ月も!」
『忙しいって、どこが! 旦那は俺らと違って働いてないでしょうが。あんたがこの1ヶ月やってるのは文字書き練習と、姫さんを傷つけず触る力加減の為にやってるラパンの果実を潰さず握る訓練ぐらいでしょう!』

えっ?
初耳ですよ!
力加減の訓練?

『あんたが潰した大量のラパンを使ってムース・ババロア・シャーベット・ジャムを俺がどんだけ作ったか分かってんですか! 姫さんとハニーじゃ食い切れんから毎日王宮厨房に、俺が運び込んでるんじゃないですか』

だからデザートの中に1品は、ラパンのお菓子が必ずあったの!?
旬だからじゃないかなんて、しれっと言ってたねハクちゃん。
でも、いったいいつやってるの?
そんな姿は見たこと無かったけど……。

『……トリィ様が寝たのを確認してから、こそこそしていたんです話ね』

セシーさんがテーブルに置かれたプレートから私のお皿に焼き菓子を1つ乗せてくれた。

『これ、生地にラパンを刻んだものが入っています。私はラパンが苦手ですの。お茶菓子に毎回出てきて……カイユ殿の嫌がらせかと思ってましたが、誤解でしたわね』

うわっ、私が気付かなかっただけで、セシーさんとカイユさんは「嫌がらせかしら、これ」って思うような関係だったとはっ。
なんて答えていいか困って、私はとりあえず焼き菓子を口に放り込んだ。

生で食べると白桃に似ていたラパンは加熱されたせいか、ちょっとすっぱく感じた。

『では、私はこれで失礼いたします。少々問題も発生したことですし』

セシーさんはそう言うと足早に去って行った。
問題?

「問題って何かな?」
「こいつの軽い口だ!」

ハクちゃんは筆記用具をハクちゃん専用筆箱にきちんと仕舞うと、ダルフェさんに向かって跳び蹴りを……跳び蹴りぃいいいっ!?
 
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