四竜帝の大陸【青の大陸編】
私達とは全く違う竜体。
 小さいけれど……とても、とても強い竜。
 四竜帝とあの方は、私達とは‘違う‘のだ。
 
「産休前に一仕事してく……ぎょわあっ!?」

 絶妙なバランスで積み上げてあった本と書類の山が崩れ、陛下が埋まった。

「……相変わらず、お馬鹿さんね。竜体で鳥肌が立つわけないでしょう? 鱗なんですから」

 竜騎士である私がこうして竜帝に歯向かえるのは、彼が私に‘お願い‘をしてるからだ。

「う、うっせー! お馬鹿な俺様を助けるのがカイユの仕事だろうがっ! よし、これならどうだ? 竜騎士団の予算は誰かさんのせいで、もう残り少ないよな!? カイユがセイフォンから帰ってきたら、追加予算を出す!」

 優しいこの子は私に‘命令‘するのを好まない。
 小さい時から、私に優しかった。
 私だけじゃなく、皆に優しい。

 優しいからこそ苦しみ続ける、青の竜帝。

 雪よりも白く、氷のように冷たいあの方のようになれたなら。
 もっと楽になれるのに。

「予算……わかりました。引き受けますわ、陛下」 

 私はもう、名前で呼んであげられない。

 ランズゲルグ。
 
 その名を口にできるのは、貴方を殺せるあの方だけ。
 
 
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