四竜帝の大陸【青の大陸編】
母親……ミルミラの件で、セイフォンを憎んでいる。
しかもこの術士は、姫さんを異界から落とした張本人だ。

正直なところ、俺としては結果的には感謝すべきだと思うんだが。
姫さんの消えぬ悲しみを知る【母】としては、カイユはミー・メイを許せないんだろう。

それに。
ジリと姫さん。
子供達と離れてイラついてる。

こりゃ、危ないな。
今のカイユはこの少女の腕を斬り落とすくらいなら、躊躇い無くやる。

「……ハニー、駄目だよ? これもあれも、全て旦那の獲物だ」

妻を傷つけた者への報復は、夫の権利。
こいつ等は姫さんの心に、一生消えぬ傷を付けた。

「分かってるわ、ダルフェ。私は子供達へのお土産を買ってくるから、この荷物達をみててちょうだい。私、あの子の黒髪に合う象牙の髪飾りが欲しいのよ」
「ああ、この街ならきっと手に入るよ。いってらっしゃいな」

片目を瞑ってそう言うと、カイユの氷のような眼差しが和らいだ。
俺の真似をするジリの姿を思い出したんだろう。
振り返らず歩き出したカイユの背に手を振って、俺は術士の少女に言った。

「さあ、昼飯にしようねぇ。ここでの飯は、竜帝陛下の奢りだぜ? なんでも好きなもんを、好きなだけ食いなさいな。……殿下もね」

最後の食事かもしれないから。

帝都に着いた途端、旦那にぶっ殺されるかもだしなぁ……とは、流石に言わなかった。


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