四竜帝の大陸【青の大陸編】
その後。

彼の視線は前を歩く竜帝さんの背中を、瞬きもせず見つめていた。
私の目を、顔を見なかった。

ダルド殿下から数歩下がって歩くミー・メイちゃんは、相変わらず外国のお人形さんのように愛らしかった。
俯いていても、その顔はとっても可愛い。
美少女なぶん、今日の衣装はちょっと残念だった。

てるてる坊主のようなぞろ~っとした地味な灰色の長衣より、ふりふりワンピとかを着て欲しい。
セイフォンの離宮で会うときは、可愛いワンピースを着ていることが多かった。

この地味なてるてる坊主コスチュームが王宮術士である彼女の正装らしいから、仕方ないのだけれど。
彼女の視線は温室の床から離れなかった。
今日の彼女は意識して、私を見ないようにしている感じだった。

セシーさんはいなかった。
この場に、彼女は来れない。
ハクちゃんの、<監視者>の<処分>対象者じゃないから。
はるばるセイフォンから来てくれた2人の前を歩くのは、青い髪を高い位置でしっかりと結った竜帝さん。

濃い……というより深いという表現の方があっているかな?
深い青色をしたアオザイ風伝統衣装・レカサを着た竜帝さんは、本日も女神様~っと拝みたくなる美しさ。
今の彼は、ハクちゃんと少々過激などつき漫才みたいなじゃれあいをしている表情豊かな<ランズゲルグ>ではなく、無表情に近い……<青の竜帝>の‘顔’だった。

無表情なところは……ちょっと、似ている。
ハクちゃんに。

ハクちゃんは一番若い竜帝の大陸、つまり一番若い四竜帝の側で過ごす。
ハクちゃん自身が幼い四竜帝のお世話をしなくても、育てなくても。
四竜帝の皆さんは<監視者>であるハクちゃんに、やっぱり“育てられて”いるんじゃないのかな?

女神様を見ていると、彼の中に。
ハクちゃんが。

ううん、<ヴェルヴァイド>が。
確かに‘いる’のを感じる。
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