四竜帝の大陸【青の大陸編】
「あ、あのっ。竜帝陛下、私が術式を使って殿下を……」
ミー・メイちゃんが小さな声で言った。
その声は私が知っている彼女のものと違って、掠れていた。
「駄目だ。今はクロムウェルが城に【障壁】を張っている。お前の手足が吹っ飛ぶぞっ!」
竜帝さんは自分と同じ位の身長のダルド殿下を、ひょいっと抱き上げた。
「りゅっ!?」
「黙れ、ダルド。餓鬼ん時にも散々してやっただろうがっ! 顔色が悪い……医務室に行こう」
ダルド殿下より細い身体で、軽々とお姫様抱っこしちゃうなんて。
カイユさんもそうだけど、女神様も怪力……竜族の人って皆がそうなんだろうか?
「あのっ! 竜帝陛下っ……いえ、なんでもありません。ありがとうございます」
青白かったダルド殿下の顔が、あっという間に赤く染まった。
無理ないと思います、うん。
罪作りですね、女神様。
でもね、ヴィジュアル的には女神様がダルド殿下にお姫様抱っこされるほうが自然な気が……う~ん、残念。
「カイユ、お前はおちびと奥の部屋にっ」
「お断りします」
カイユさんは背後から私の髪に触れ、飾られた花の位置を直しながら言った。
「私、嫌です」
その白い花はジャスミンのような良い香りがして、目をつぶると初夏の庭が脳裏に浮かぶ。
母がホームセンターでジャスミンの小さな鉢を買ってきて、数年で庭のフェンスを覆うほどに成長した。
「カイユ!……頼んでるんじゃない、これは<主>として命じている。青の竜騎士カイユ、<監視者>のつがいとこの場を去れ」
南国を思わせる爽やかな甘さ。
その香りが大好きだと、母は……小さな可憐な花が満開になるさまを、満足げに眺めていた。
「嫌です」
今、ここにいるのは。
私の髪を、頭を優しく撫でてくれているのは。
カイユ。
母様。
「嫌、です。私はい……や」
「……カイユ、お前……」
ミー・メイちゃんが小さな声で言った。
その声は私が知っている彼女のものと違って、掠れていた。
「駄目だ。今はクロムウェルが城に【障壁】を張っている。お前の手足が吹っ飛ぶぞっ!」
竜帝さんは自分と同じ位の身長のダルド殿下を、ひょいっと抱き上げた。
「りゅっ!?」
「黙れ、ダルド。餓鬼ん時にも散々してやっただろうがっ! 顔色が悪い……医務室に行こう」
ダルド殿下より細い身体で、軽々とお姫様抱っこしちゃうなんて。
カイユさんもそうだけど、女神様も怪力……竜族の人って皆がそうなんだろうか?
「あのっ! 竜帝陛下っ……いえ、なんでもありません。ありがとうございます」
青白かったダルド殿下の顔が、あっという間に赤く染まった。
無理ないと思います、うん。
罪作りですね、女神様。
でもね、ヴィジュアル的には女神様がダルド殿下にお姫様抱っこされるほうが自然な気が……う~ん、残念。
「カイユ、お前はおちびと奥の部屋にっ」
「お断りします」
カイユさんは背後から私の髪に触れ、飾られた花の位置を直しながら言った。
「私、嫌です」
その白い花はジャスミンのような良い香りがして、目をつぶると初夏の庭が脳裏に浮かぶ。
母がホームセンターでジャスミンの小さな鉢を買ってきて、数年で庭のフェンスを覆うほどに成長した。
「カイユ!……頼んでるんじゃない、これは<主>として命じている。青の竜騎士カイユ、<監視者>のつがいとこの場を去れ」
南国を思わせる爽やかな甘さ。
その香りが大好きだと、母は……小さな可憐な花が満開になるさまを、満足げに眺めていた。
「嫌です」
今、ここにいるのは。
私の髪を、頭を優しく撫でてくれているのは。
カイユ。
母様。
「嫌、です。私はい……や」
「……カイユ、お前……」