四竜帝の大陸【青の大陸編】
黒の竜帝さんのお城に移ったら、もうこの大陸に私は戻ってこない。
ハクちゃんは、一番若い……幼い竜帝さんの大陸を拠点にして<監視者>のお仕事をするのだから。

長命な竜族である女神様が次代に変わるまでなんて、私は生きられない。
貴方だって、それは同じでしょう?
私達人間は、竜族とは与えられた時間が違う……。

「ダルド殿下、ミー・メイちゃん」
「トリィ殿……」

ダルド殿下。
ミー・メイちゃん。
ハクのいるこの世界に、連れて来てくれてありがとう。
もう会えない人達のことを考えると、感謝の言葉は口に出来ないけれど。


「さようなら」

ありがとう。


「竜帝さん。早くダルド殿下を医務室に連れて行ってあげてください」

セレスティスさんと、彼を会わせないで。

「おちび、お前……? そうか、ミルミラの事を聞いちまったんだな」

「ん? 僕のミルミラがどうかした?」 

「ちっ、ミルミラのことになると地獄耳だな」

女神のような美貌にはふさわしくない舌打ちをしながら、竜帝さんは右足を使って椅子を自分へと引き寄せた。
これまた、お行儀が悪い。

でも、ダルフェさんもカイユさんも(もちろんハクちゃんも)注意しなかった。
皆の視線は、彼に向けられていた。
ハクちゃんだけは、興味が無いのか全くそちらを見なかった。
セレスティスさんは笑みを浮かべながら、銀細工で装飾された温室の扉の前に立っていた。

「皆様、御機嫌よう。ふふっ……呼ばれてないけど、来ちゃった」

そう言って、片手を胸に当て優雅な動作で一礼した。
開ける時も、閉める時も。

「セレスティスさん……」

全く音がしなかった。
私が開け閉めすると、キィって音がする扉なのに……。

「セレスティス。ニングブックとプロンシェンはどうした? お前を見ておけと……あいつ等から電鏡での連絡が来てねぇ」

足で引き寄せた椅子にダルド殿下を座らせて、竜帝さんは彼をセレスティスさんから隠すようにその前に立った。
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