四竜帝の大陸【青の大陸編】

13

変質者っ!!

私は、自分が普段使っている部屋まで走ったした。
こんなに思いっきり走ったのは、中学の運動会以来です!
高校の体育祭はやる気が無く、だらだら走って担任が激怒したっけ。

と、とにかく部屋まで逃げなきゃ!

私は白い石で出来た廊下を抜け、離宮の最奥にある部屋まで急いだ。
重厚な扉は見た目とは違い、私の力で難なく開く。
この扉は術式が施してあり、ハクちゃんと私が許可した人しか開けられない。
だから変質者は、絶対に入ってはこられない。

『あら、トリィ様……どうなさったの!? お泣きになったのですか?』

部屋に居たカイユさんが私の顔を見るなり青ざめた。

『なんてこと! 何があったんです?』

カイユさんは私の肩を優しく撫でながら、ソファーへ座らせてくれた。

『大変ですカイユ! は……裸の大男、出た! いきなり出た! 怪しい。危ない、です!』
『裸の……変質者ですか? この離宮に進入できる程の【力】のある者が……。ダルフェとヴェルヴァイド様は? その変質者を処理中ですか?』

繰り返された単語は初めて聞いたものだったけど、絶対に‘変質者’って単語に違いない!

『へ……へんしつしゃ、とハクちゃん達?』

カイユさんは衣類を詰めていた大きな皮製の鞄を軽々と持ち上げ窓際に移動させつつ、窓から外の様子を確認して言った。

『外の気配は二つ。ダルフェとヴェルヴァイド様ですね。侵入者の処理は終わったのでしょう。あの二人でなら全世界と戦争したって勝ちますもの。心配は無用ですわ。あ、帝都への道中に必要な最低限のものは荷造りしましたの! 途中で購入も可能ですし、これくらいで……』

帝都。

そうだった!
私は帝都から青の竜帝が来るって訊いて……いろいろ考えて悲しくなって。
それで……。

それで?

ハクちゃんが物騒な事を言ったから。
頭にきて、悲しくて、辛くて……取り乱した。

それで。

気づいたら変態に捕まってて、びっくりして逃げた。
 
逃げてきた。
変質者から。

ハクちゃんを置いて。

『わ、私は戻るです庭!』

ハクちゃんは強い。
それは分かっているけれど。

あの子は、あんなに小さい竜なのに。
まだまだ幼い子(歳は知らないけど)を、変態と置いてきちゃった!
教育上、まずいよね!?

さっきは喧嘩というか揉めてたんだけど、置いて逃げるなんて……。
私は扉に駆け寄り、開けようとドアノブを掴んだ。

『うきゃっ!?』

同時に廊下側から扉が引かれたので、前に倒れこんでしまった。

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