四竜帝の大陸【青の大陸編】
俺は騎士団本部の前で、セレスティスを待っていた。

20分程で目的の人物は現れた。
南棟へと続く石畳の上を音を立てずに歩きながら、俺の姿に気づくと片手を揚げて……その顔には見慣れた微笑み。

「舅殿」
「ごめん、待たせちゃったね。僕の部屋で話そう」

セレスティスはカイユが俺と結婚してからは、騎士団本部2階の独身寮で月の大半を過ごしている。
ここにはヒンデリンとパス達も住んでいる。

セレスティスは寮長兼生活指導係りみたいなもんだ。
ヒンはともかく、パスとオフは歳のわりに餓鬼過ぎるから‘押さえ‘が必要だからな。

「ふふっ……ニン達、何してた?」
「飯食ってました」

カイユの育った家に帰るのは月に2回ほどらしい。
セレスティスは、ミルミラの死んだあそこを恐れているのかもしれない。

幸せだった記憶を凌駕する、果てない憎しみと哀しみと孤独が。
あの家でこの人の帰りを待っているから。

「トマトソースのパスタでしょう? あ~あ、まだ顎と胸元に少しついてる」

<王子様>は白いレースのハンカチを差し出して言った。

「僕が朝四時起きで作ったんだよ。赤に赤って、面白いかなと思って」

赤(おれ)の行動も、お見通しかよ。

「あんたねぇ」

全部、舅殿の計画通りに進んだってことか?
旦那もおっかねえけども、この人もやばい人だよなぁ。

「ごめんね、ダッ君」

へ?

「ダッ!?」

おい、なんであんたまで!?

「こないだ、プロンシェンが教えてくれたんだよ。お父さんには、未だにそう呼ばれてるんだってね」
「……部屋に行く前に、プロンシェンのおっさんをもう一発殴ってきます」
「そう? 一発と言わず好きなだけどうぞ」 

ひよこ好きの父ちゃんよ。
そっちに帰ったら覚悟しておけよ! 




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