四竜帝の大陸【青の大陸編】
「手っ取り早く稼ぎ頭だった貿易事業を強化して、販路の拡大を計った。人間の商人を達出し抜くために、各国の権力者を取り込んだ……父親に似て、あの子は稀有な容姿を持って生まれた。僕等はそれも最大限に利用した」

目の前にいる俺を見ながら。

「あの子の手にたった一度口付けるためだけに、民から吸い上げた富を丸ごと差し出すような馬鹿も多かった。あの子を一目見るために、数分の謁見に莫大な金が動いた」

もっと遠くを。
戻らない時間を。

「あの子に堕ちぬ輩は、僕等竜騎士が排除した。竜騎士が暗躍し、都合の良い者を各国の要職につけるようにして……奇麗事だけじゃやってけなかったから、人間のやり方を真似たのさ」

失ったものを。

「あの頃の『裏』を知って生き残ってるのは陛下と僕、ニングブックとプロンシェン。そしてバイロイトだ」

俺にはけっして見ることの出来ない何かを。
この人はずっと見て……見続けて生きてきた。

時々、俺は思うんだ。
この人は地上に残った幻のような存在で、『本物』はミルミラの側にいるんじゃないかって。

「現陛下がセイフォン王家を特別扱いする理由は、ここのところにあるんだけどね。もう皆、死んじゃったんだから気にしなきゃいいのに、陛下はいつまでもいろいろいじいじじめじめ気にしすぎなんだよ……同じような顔でもカッコンツェルは、もっとからっとしてたんだけどな」

カッツェ……カッコンツェル。
陛下の父親。
父親もあんな顔だったのか、美女顔遺伝子って強いんだな。

「珠狩りなんて過去に類の無い邪術の存在を四竜帝が知ったのは、ちょうどその頃だった」

珠狩り。
最初の被害が起こったのは、確か黒の大陸だったはずだ。
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