四竜帝の大陸【青の大陸編】
「そりゃ、旦那の力を借りれれば助かりますがね……旦那が竜族にこれ以上‘近く’なったら、人間共は危機感を強めて、竜族を……だから、今までだって……」
「だから、それは事情が……状況が変化したからさ。僕達が追っている導師が真に欲しているのは、<監視者>……<ヴェルヴァイド>だと分ったからだ」


ヴェルヴァイド?


「なっ……」

<ヴェルヴァイド>……旦那を!?

「導師にとって僕等竜族は素材であり、実験としての役割もあったんじゃないかと四竜帝達は考え始めている」

旦那が人間に……どんなに優れた術士だろうと、負けるはずが無い。
竜族だけじゃなく、人間だって嫌ってほど分っているだろうに。

「正直言って、メリルーシェの契約術士が使える可能性は低かった。あいつが導師とつながってるか、半信半疑だったんだけど……やっと、動き始めたんだ」

竜騎士じゃないバイロイトに、術士は抑えきれない。
契約術士は契約中は雇い主と結んだ『理(ことわり)』によって、雇い主を殺害することはできないが……。

「それって、いつぐらいからです?」
「<監視者>がペルドリヌの教主をミンチにした後」

ずいぶん時間が経ってるな。
それだけ慎重に、陛下は機を探ってたってことか。

「あの人、贈物だって言って教主の頭部を陛下にくれたんだって。なんで喜ばないのかって、おかんむりだったらしいよ? 面白い人だよね」
「……陛下は血を喜ばない。逆にそんな旦那を見て、辛い思いをしたんじゃないんですか?」

陛下にとって‘ヴェル’という存在は、特別だ。
陛下だけじゃない。

俺の母親も……四竜帝にとって<ヴェルヴァイド>は特別な存在だ。
だから、か。
だから。

陛下は、旦那を守りたかったんだ。
負けるはずがないことを知っていても、不安だったのかもしれない。
特別な、大切な人だから。
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