四竜帝の大陸【青の大陸編】
「ダルフェとジリギエに作ってあげたいんですけど、一人じゃ自信が無くて……。私、剣の扱いは得意なんですが包丁は苦手なんです」
あたたかな手は私から離れ、キッチンの壁に取り付けた真鍮のフックにかけられていた花柄のエプロンへと伸びた。
「私も……いいの?」
カイユさんは私の白いドレスの上に、ダルフェさん作のエプロンを手際良く着せてくれた。
胴に両腕をまわし、きゅっと縛って……微笑んだ。
「ええ。ぜひ、お願いします。私も貴女とおそろいのエプロンをダルフェに作ってもらおうかしら?……あら、ヴェルヴァイド様」
水色の瞳の動きを追い、私も後ろを見た。
「ハクちゃん。お手伝いに来てくれたの?」
そこには花柄ふりふりエプロンを着て、短い両手でお皿を抱えたハクちゃんがいた。
「うむ。我は気が利く男なので、皿を持ってきたのだ!」
ふわふわと飛びながら寄ってきて、私にお皿を手渡しながらカイユさんに言った。
「カイユよ、お揃いは許可できぬ」
「……どうやら諦めたほうが良さそうです。あぁ、残念だわ」
カイユさんは溜息混じりに言ったけど、その顔から澄んだ微笑は消えていなかった。