四竜帝の大陸【青の大陸編】
「では、いただきます」

ダイニングテーブルにはセレスティスさん特製トマトソースがたっぷりかかったパスタと、レースのような不思議な葉とお豆のサラダ。
少なめに盛られたのが私、その3倍の量が盛られている迫力あるお皿がカイユさんの分。

「今日のトリィ様には食堂のランチはちょっと胃に重たいでしょうから、ちょうど良かったですね」

食堂の数種のランチメニューは揚げ物が多い。
肉・魚・野菜、どれがメインでも揚げ物となっていることがほとんどだった。
竜族は揚げ物を好むから、ということらしい。
そういえば、意外なことに砂糖より油が(もちろん人間を含む)動物は好きなんだって、中学の時に先生が言ってたっけ……。

「……ヴェルヴァイド様、エプロンをとってしまわれたんですね。大丈夫ですか?」

向かい合わせの椅子に腰掛けたカイユさんが、サラダを小皿に取り分けてくれながら言った。
テーブルの上にちょこんと座り、銀のフォークを左手で握り私のお皿を無言でじーっと見つめていたハクちゃんは、パスタから視線を動かさず答えた。

「うるさい黙れ。気が散る」

うわっ!?
カイユさんに、なんて言いかたすんのよ~っ!

「こら、ハクちゃん!」
「トリィ様、お気になさらないで。……そうですか、出すぎたことを言いまして申し訳ございませんヴェルヴァイド様」

ハクちゃんは脱いでしまったけれど、私はエプロンをしたままだった。
こんな高価なドレス(しかも白!)を着たままランチタイムに突入するんだもの、エプロンをしなきゃ怖くて食事なんて無理です。
なんたって、トマトソースだし。

「さあ、温かいうちにいただきましょう」 
「はい。ありがとう、カイユ」

お腹は空いてないし、食欲も無いけれど。
ハクちゃんが心配するから、ちゃんと食べなきゃ。
ダルフェさんに借りた【目指そう長寿・正しい食事で快適シルバーライフ!】を熟読しているハクちゃんは、私の食事に関して並々ならぬ情熱を注いでいる。

シルバーライフ……なんかひっかかる点もありますが、私のことを考えてくれてのことなのであえてその部分は見て見ぬふりをしちゃったのです。
それに、セレスティスさんが作ったというトマトソースを残すわけには……ん?
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