四竜帝の大陸【青の大陸編】
どうしてこんなことしたのと、怒った私にハクちゃんは言った。

==我以外の雄がりこの眼に映るなど……手紙など寄越しおって! りこに懸想しておるに違いない!

==りこだってあの王子はイケメンだと言った。イケメンは顔が好ましいという意味なんだろう? 我は<かわゆい顔>で王子は<イケメン>。我が不利ではないか! 

==手紙とて文字を書いたことの無い我への嫌味か? そうなのかっ!?こっとそうなのだ!

頭を抱えて地面をごろごろ転がる姿を見ていたら……なんか、かわいそうになってきた。
ダルド殿下は、確かにイケメン。
別に私のタイプじゃないけど、世間一般的視点で見たらもてそう。
背も高く(ダルフェさんは高すぎ)顔良し、家柄良し、多分性格良し。
経済力もある。
人間の女性なら惹かれて当然の要素が、てんこ盛り。
ちび竜のハクちゃんがかなう相手じゃない(条件的には)。

私が人間の女性だからハクちゃんはコンプレックスを感じ、自分に自信が無くなり過剰に男の人に反応してるのかもって思ったら……なんて、いじらしいんだろうって……。
おちびの竜で、経済力ゼロで、はっきりいって性格に難有りのハクちゃん。
 
人間の私をつがい……伴侶だと、妻だと宣言したちょっぴり変で可愛い竜。
好きだとか愛してるとか言わないけれど、私のことを想ってくれてるのは充分に伝わってきていた。
恋愛関係とは違っても、私だって。
私だって!

『姫さん、話がある。……だいじょうぶか?』
『はい、です。平気』

手招きされ、洗面所から出て彼の側に行くとダルフェさんは整った顔に困ったような……戸惑うような表情を浮かべた。

『異界人はこちらの人間とは成長速度が違うのかねぇ。姫さん、26にはとても見えないなぁ。二十歳前後って感じだ』

日本人は外国人から見ると実年齢より若く見えるらしいけど、異世界でもそうなんだ……。

『私の人種、小柄で小さい。そう見られること多いです』
『俺は見た目だけじゃなく、内面もって言いたかったんだけど』

あぁ、そうか。
そう意味か……。

精神的に大人として成長してない。
そう言われても仕方ない。

今まで衣食住に困ったり、大きな困難に立ち向かった事も無い。
日本で生まれて、のほほ~んと育ってきた。

仕事だって、結婚するまでの腰掛でいいやって決めた。
やりたくない事は避け、楽なほうばかりに流されて……。

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