四竜帝の大陸【青の大陸編】
「答えは誰にも分からない。貴女にしか分からないの。貴女の幸せは……私達の‘幸せ‘は他の者や夫が選び、決めることではないのだから」
カイユさんは私の手から刀をとり、そっと床へ置いた。
体を離して再び見上げた顔には、少しだけ困ったような……澄んだ笑顔。
「ふふっ、竜の雄は本当に鈍くて駄目ね。いつまでたっても、雌の心を理解できないのだから。私がこんなにも幸せであると、つがいであるダルフェすら分かっていない。まったく、あの馬鹿にも困ったものですわ。私はお馬鹿で意気地なしのダルフェを、こんなにも……誰よりも愛しているのに」
不満げな口調とは裏腹に、ほんのりと頬が染まっていた。
「うん。そうだね、女心を察して欲しいよね」
私は足元に置かれた刀に手を伸ばした。
白く艶のある床石は、刀をいっそう美しく見せていた。
本物の刀は見た目以上に重いことを学んだので、もちろん両手で持ち上げた。
「はい、カイユ」
カイユさんに、それを手渡した。
綺麗な綺麗なこの刀は、大勢の人を傷つけ殺めた。
それを知っても。
綺麗だと思う心は変わらなかった。
「……ありがとうございます」
刀を受け取るカイユさんの銀髪が眩しいほどに輝いていて、私は眼を細めてしまった。
私達しかいないお城の廊下は、明かり取りの窓から陽が絶えず降り注ぎ。
それは天から伸びた光のリボンのようだった。
「行こう、カイユ。」
私から手を差し出し。
カイユさんが私の手に触れるのを待たず、手を握った。
「さすがにもう転ばないけど、繋ぎたいの。カイユと、母様と手を繋いで歩きたい」
朱と白。
「……トリィ。私の娘、異界から帰ってきてくれた私の可愛いお姫様」
白と朱。
それは悲しいほどに、互いを引き立てあうのだと知った。
「母様のように、貴女も」
刀を振るって命を奪うその手は。
「幸せに、なりなさい」
大好きな母様(カイユ)の。
優しい手。
白でも朱でも。
「……はい。母様」
大好きな。
母様の手。
カイユさんは私の手から刀をとり、そっと床へ置いた。
体を離して再び見上げた顔には、少しだけ困ったような……澄んだ笑顔。
「ふふっ、竜の雄は本当に鈍くて駄目ね。いつまでたっても、雌の心を理解できないのだから。私がこんなにも幸せであると、つがいであるダルフェすら分かっていない。まったく、あの馬鹿にも困ったものですわ。私はお馬鹿で意気地なしのダルフェを、こんなにも……誰よりも愛しているのに」
不満げな口調とは裏腹に、ほんのりと頬が染まっていた。
「うん。そうだね、女心を察して欲しいよね」
私は足元に置かれた刀に手を伸ばした。
白く艶のある床石は、刀をいっそう美しく見せていた。
本物の刀は見た目以上に重いことを学んだので、もちろん両手で持ち上げた。
「はい、カイユ」
カイユさんに、それを手渡した。
綺麗な綺麗なこの刀は、大勢の人を傷つけ殺めた。
それを知っても。
綺麗だと思う心は変わらなかった。
「……ありがとうございます」
刀を受け取るカイユさんの銀髪が眩しいほどに輝いていて、私は眼を細めてしまった。
私達しかいないお城の廊下は、明かり取りの窓から陽が絶えず降り注ぎ。
それは天から伸びた光のリボンのようだった。
「行こう、カイユ。」
私から手を差し出し。
カイユさんが私の手に触れるのを待たず、手を握った。
「さすがにもう転ばないけど、繋ぎたいの。カイユと、母様と手を繋いで歩きたい」
朱と白。
「……トリィ。私の娘、異界から帰ってきてくれた私の可愛いお姫様」
白と朱。
それは悲しいほどに、互いを引き立てあうのだと知った。
「母様のように、貴女も」
刀を振るって命を奪うその手は。
「幸せに、なりなさい」
大好きな母様(カイユ)の。
優しい手。
白でも朱でも。
「……はい。母様」
大好きな。
母様の手。