四竜帝の大陸【青の大陸編】
97
「あの方を、愛していたのです」
ハクの。
ヴェルヴァイドの過去を。
彼のいないここで聞く、私は卑怯?
だって。
知りたい。
どうしようもなく、あの人を愛してるから。
「先代魔女はサーテメルンという小さな国の巫女でした。彼女は受け継いだ魔女の記憶を知識として最大限に利用し、巫女王……統治者となりました」
車椅子に座るセシーさんの視線を感じていたけれど。
私は顔をあげることが出来なかった。
彼女の綺麗な紅茶色の瞳を、しっかりと見ることが出来なかった。
「……その人が」
なぜ出来ないのか。
分かってるだけに……そんな自分が嫌だった。
これは。
焼きもちなんて、可愛い感情じゃない。
もっと深くて暗い、底の見えない独占欲。
顔も上げられない弱虫のクセに。
それでも聞いてしまう私は、ずるい。
「恋人、やっぱりいたんですね……。うん、それが普通ですよね」
言ってから、後悔した。
ハクの恋人。
頭の中に浮かんだそれが音となって、自分の耳に入り込んだから。
ハクの……ヴェルヴァイドの恋人。
それは聞きたくない、言葉。
でも、知りたい言葉。
『恋人』という言葉は『夫』という言葉よりなぜか。
身体の奥に、甘い響きを持つのだと知った。
ハクの。
ヴェルヴァイドの過去を。
彼のいないここで聞く、私は卑怯?
だって。
知りたい。
どうしようもなく、あの人を愛してるから。
「先代魔女はサーテメルンという小さな国の巫女でした。彼女は受け継いだ魔女の記憶を知識として最大限に利用し、巫女王……統治者となりました」
車椅子に座るセシーさんの視線を感じていたけれど。
私は顔をあげることが出来なかった。
彼女の綺麗な紅茶色の瞳を、しっかりと見ることが出来なかった。
「……その人が」
なぜ出来ないのか。
分かってるだけに……そんな自分が嫌だった。
これは。
焼きもちなんて、可愛い感情じゃない。
もっと深くて暗い、底の見えない独占欲。
顔も上げられない弱虫のクセに。
それでも聞いてしまう私は、ずるい。
「恋人、やっぱりいたんですね……。うん、それが普通ですよね」
言ってから、後悔した。
ハクの恋人。
頭の中に浮かんだそれが音となって、自分の耳に入り込んだから。
ハクの……ヴェルヴァイドの恋人。
それは聞きたくない、言葉。
でも、知りたい言葉。
『恋人』という言葉は『夫』という言葉よりなぜか。
身体の奥に、甘い響きを持つのだと知った。