四竜帝の大陸【青の大陸編】
額にかかる金の髪を長い指で払った後、その指先は胸元を飾る宝石へと移った。
優しく撫でるように指先を青い石の曲面を滑らせる仕草は、思わず目を逸らすほど……優雅で妖しい。

「貴女は愚かな女と先代を軽蔑されますか? それとも哀れみますか? ……トリィ様は先代が狂うほどに欲したあの方を得られた。その貴女は、彼女をどう思われるのでしょうか……」
「わた……し? 私は……」

巫女王。
先代の魔女。

彼女は自分と似た女性といるハクを見て。
その女性を『自分』にして……自分ではない『自分』に嫉妬して、殺してしまうほど愛していたの?

「っ、なんだよそれ!? 人間は同族をそんなくだらない理由で簡単に殺すんだ! なんでなんだよ!?俺様には理解できねぇよっ!」

吐き捨てるように言う竜帝さんと違って。

私は。
私には。

「私は……」

その人の気持ちが。

「……ハクはその人を止めなかったの?」

分かる。
分かる、気がする。

以前の私だったら理解できない、その強い想い。
今の私には。
ハクと出会った私には……。

「たくさんの女性が犠牲になってるって、ハクは気がつかなかったの?」

巫女王を責める資格が、私には無い。

私、あの時。
竜帝さんの薬草園で。

世界を見捨てて、ハクを選んだ。
カイユさんのこともダルフェさんのことも、竜帝さんのことも。
この世界の人達全てを、見捨てた。

私には、ハクだけでいいと……。
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