四竜帝の大陸【青の大陸編】

14

そこへ戻った私が見たのは、こんもりした布の山だった。

『申し訳ございません、トリィ様。お声をかけても反応なさらず、その……』

カイユさんが私に困惑した顔を向け、言った。

『取りあえず、外套だけかけさせていただきましたが。その』
『つまりマッパで四つんばいってことだろ、外套の下の旦那は』

マッパで四つんばい。

実も蓋も無いっていうか、容赦ないですねダルフェさん。
頭から四肢の先まで外套に隠れていて、顔が全く見えない。
でも、髪の毛らしきものが地面に少し流れ出ている。

うわ~白い!
白髪!?

良く見ると白髪とは違って艶やかで光沢があり、まるで真珠で出来てるみたい。
真珠。
ハクちゃんの鱗と同じ色。
軽くウェーブがかかった髪は推測するに、かなり長いのでは?
外套から出るくらいだし。

「ハ、ハクちゃんなの?」

布の山が微かに動く。
やっぱり、そうなんだ。
どうしよう?
なんて言ったら……。
私、ひどいこと言ったよね。

「その。あのっ! 私はハクちゃんと……ハクちゃんが」



『言葉がわからぬ。人型は念話能力が使えん』



うわっ!?

喋ったよ、ハクちゃんが!
声……初めて聞いたハクちゃんの声。
深くて重くて、響く声だ。

ん?
言葉が分からないって言いました?

『言葉だけではない。我はりこの事が何も分からぬ』

ハクちゃん?

『りこを喜ばせたいのに、守りたいのに。幸せにしたいのに』

ハクちゃん……。

『我の【力】はりこを泣かせるのか? 我の存在がりこの幸せを奪うのか?』

ハクちゃん、ごめん。

『我はりこを苦しめ……不幸にするのか』

ハクちゃんの言葉の中にある単語は、言葉勉強中の私にも意味が分かるものだった。

泣かせる。
幸せ。
奪う。

苦しめ……不幸?

『ち、違う! ハクちゃん、そうじゃない!』

私はハクちゃんを両腕で強く抱きしめた。
念話が通じないなら身体で表せばいい!
放したくない、離れたくないって!

『ごめ、なさい。そば、いたいの。‘つがい‘やめない』

ごめんなさい。
ハクちゃん。
ごめんなさい。
この世界の人達。

皆が不幸になるかもしれない。
でも。

『ハクちゃんは私の‘つがい’。伴侶。大切な、たった一人の……』

そう言った私に返されたのは……。

『蹴ったではないか』

はい?

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