四竜帝の大陸【青の大陸編】
「我は、前にも言ったと思うのだが」

ハクちゃんを抱っこするのが、私は好き。

「我の体温では、暖はとれぬのだ」

小さな竜のハクも、見上げるほど長身の人型のハクも。
この私の腕の中に閉じ込めて、貴方を独占したい。

「私も前に言ったよ? 貴方に触れてると、私……身体も心もあたたかくなれるの」

こうしていれば。
誰も、私達を引き離せないから。

「私にとってハクちゃんは、存在自体がお日様みたいに暖かいの。こうしてるとね、心がほんわかしてきて……」

誰も。
私から貴方を奪えないように。

「我がりこのお日様……太陽?」

私を見下ろしていた金の瞳が、空を見上げた。

「我がりことこうしていると、内に感じるこの感覚がりこの言う‘ほんわか’なのか?」

切れ長の目を眩しそうに細めて、ハクは言った。

「うん。そう、それが‘ほんわか’なの」

こうして触れ合ってると、離れていた数十分が何時間……何年もの長い間だったような気がしてくる。
離れてた時間を埋めるように、ハクの白いレカサに頬を押し付けた。
香ってくるは、嗅ぎ慣れたハクの匂い。

「2人でいれば、いつも……ずっと。ほんわか、だね」

貴方が、私の幸せ。
ねぇ、ハクちゃん。
私は貴方の幸せになれているのかな?

「そうだな。ほんわか、なのだ」

そっと私の髪を撫でるその手の感触に……違和感。
目で確認すると、彼の手には白い手袋。

「……ハクちゃんが手袋なんて、珍しいね」
「ああ、これか。必要になるかと思ったのだが」

必要?
今日は手袋するほど寒くないけど……なんで手袋したんだろう?

「りこも我もほんわか中であるので、今日はやめておく。ふむ、りこに触れるのに、これは邪魔だ。要らぬ」

ハクちゃんは色素の薄い唇に指先を添え、中指の先を前歯で噛んで手袋を取った。
まずは左手、そして同じようにして右手も外し。

「あぁ~っ!?」

横を向いて……竜帝さんの執務室の方に顔を向けて、口から手袋を離した。

「…こらっ、ぽいぽいしないの! ……え?」

地面へと落ちたはずの手袋を、私は見失ってしまった。
私の落下予測地点には、ハクちゃんが口から落とした白い手袋が無い。
……わざわざ、転移させたの?
私がいつも、ぽいぽいしちゃいけませんって言ってたからかな?

「それはりこに、なのだ」
「え?」

真珠色の爪に飾られた左手の人差し指が、私の手にあるピンクの封筒をつついた。
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