四竜帝の大陸【青の大陸編】
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自分で言うのもなんだけど。
「俺って、働き者だよなぁ」
舅殿と別れた後、俺は第二医務室へ向かっていた。
「2日間全く寝ずにお仕事……ま、一週間くらい平気だけどねぇ」
この青の大陸に来て。
カイユのつがいになって……青の竜騎士団に入ってから、赤の竜騎士だった頃の3倍は働いてる気がするな。
「<赤>の頭やってた時より忙しい……ま、いいけどねぇ」
今、俺が歩いているのは青の竜帝の城……西棟二階にある第二医務室へと続く渡り廊下だ。
石作りではなく硬い木板が敷かれ、それは光沢のある黒い色をしていた。
黒檀ではないということは俺にも分かるが、この珍しい木材が何かは全く見当がつかなかった。
左右の壁に等間隔につけられた嵌め殺しの窓は、アーチ型で縦に細長く、床から天井近くまであった。
そこに映る自分の姿に、ふと足を止める。
詰襟の青い騎士服。
腰には細身の剣。
赤の大陸に居た時は深紅の騎士服を着て、剣ではなく刀を持っていた。
髪も、腰に届くほど長かった。
「……父さん。俺、髪を前みたいに伸ばす気はねぇんだ。ごめんな」
俺の父親は、この赤い髪が大好きだと言ってくれた。
だから、伸ばしていた。
父さんが嬉しそうに俺の髪を、背でまとめて一つに……三つ編みにするもんだから、髪を切れなかった。
「……」
髪に触れると、蘇る。
幼い日が、脳裏に浮かぶ。
幼生の頃を思い出す。
「母さん……」
<色持ち>に生まれた俺を、母親は過保護に扱った。
小さな俺を長く伸ばした真っ赤な髪で包んで頭部に仕舞い込み、幼生の俺を1日中離さなかった。
その頃の俺にとって『世界』とは、母親の真紅の髪の中だった。
「……はは、これも遺伝って言うのねぇ?」
ガラスに映る俺の髪の中から、ここにはいないジリギエの緑の瞳がこちらを見ているような気がした。
「心配するな。大丈夫だよ、ジリギエ」
大丈夫だと口にしているクセに、心の奥では何かが燻る。
目の前の窓ガラスを叩き割りたい衝動を奥歯で噛み砕き、俺は医務室へと向かう足を早めた。
「俺って、働き者だよなぁ」
舅殿と別れた後、俺は第二医務室へ向かっていた。
「2日間全く寝ずにお仕事……ま、一週間くらい平気だけどねぇ」
この青の大陸に来て。
カイユのつがいになって……青の竜騎士団に入ってから、赤の竜騎士だった頃の3倍は働いてる気がするな。
「<赤>の頭やってた時より忙しい……ま、いいけどねぇ」
今、俺が歩いているのは青の竜帝の城……西棟二階にある第二医務室へと続く渡り廊下だ。
石作りではなく硬い木板が敷かれ、それは光沢のある黒い色をしていた。
黒檀ではないということは俺にも分かるが、この珍しい木材が何かは全く見当がつかなかった。
左右の壁に等間隔につけられた嵌め殺しの窓は、アーチ型で縦に細長く、床から天井近くまであった。
そこに映る自分の姿に、ふと足を止める。
詰襟の青い騎士服。
腰には細身の剣。
赤の大陸に居た時は深紅の騎士服を着て、剣ではなく刀を持っていた。
髪も、腰に届くほど長かった。
「……父さん。俺、髪を前みたいに伸ばす気はねぇんだ。ごめんな」
俺の父親は、この赤い髪が大好きだと言ってくれた。
だから、伸ばしていた。
父さんが嬉しそうに俺の髪を、背でまとめて一つに……三つ編みにするもんだから、髪を切れなかった。
「……」
髪に触れると、蘇る。
幼い日が、脳裏に浮かぶ。
幼生の頃を思い出す。
「母さん……」
<色持ち>に生まれた俺を、母親は過保護に扱った。
小さな俺を長く伸ばした真っ赤な髪で包んで頭部に仕舞い込み、幼生の俺を1日中離さなかった。
その頃の俺にとって『世界』とは、母親の真紅の髪の中だった。
「……はは、これも遺伝って言うのねぇ?」
ガラスに映る俺の髪の中から、ここにはいないジリギエの緑の瞳がこちらを見ているような気がした。
「心配するな。大丈夫だよ、ジリギエ」
大丈夫だと口にしているクセに、心の奥では何かが燻る。
目の前の窓ガラスを叩き割りたい衝動を奥歯で噛み砕き、俺は医務室へと向かう足を早めた。