四竜帝の大陸【青の大陸編】
庭へと続くガラス戸の前に横一列に整列し、俺達はある人物を見ていた。

緩やかに波打つ真珠色の長い髪が、漆黒の外套の背に流れ落ちていた。
氷点下の美貌に、黄金の瞳。

「……旦那」

<ヴェルヴァイド>が、そこに居た。

ダルド殿下も王宮術士の娘も、車椅子に座る魔女閣下も。
誰もが無言で、庭に立つ存在に魅入る。

それは人外の美しさに引き寄せられるなんて生ぬるいモノじゃなく、誰もが魂の奥の奥に隠し持っている闇が咽喉から這い上がって、白き麗人へと這いずっていくような……。

「あ~……なんつかーか、まあ……で、あんた方はいったい何をしたんすか?」
「っ!?」

俺の問いに反応したのは、灰色の外套をまとった少女だった。
ふ~ん、なるほどねぇ。
そっか、この子か。

「ダルフェ、じじいは……大丈夫だと思うか?」

はっきり言って、俺はこの場に居たくないし見たくない。
だが、俺の袖を握る小さな青い手を振り払うことも出来ない。

それは、この小さな竜が青の竜帝だからではなく。
俺個人として。
この人を気に入ってるからだろう。

「大丈夫っすよ。……多分、ね。姫さんが一緒のようですからねぇ……まぁ、ここでセイフォンご一行様皆殺しってこたぁないですよ」
  
ここからは姫さんの姿が見えない。
旦那が外套の中に……こちらの視線から意識して隠しているとしか思えなかった。

一瞬で転移して南棟に戻れる旦那があそこに居る、留まっている理由……それを想像すると、ぞっとした。
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