四竜帝の大陸【青の大陸編】
ダルフェさんの馬鹿っ!

前もって教えてくれたら心の準備が……。
私は精一杯の恨みがましい視線で、ダルフェさんを睨んだ。

『そんな眼で見なさんな。異界人の美醜基準が俺には分からなかったからなぁ』

にやにやしながら、彼は言う。
確信犯でしょ!?
絶対、おもしろがってるぅううう~!

『り、りこ? 怒ってるのか? やはり小竜の我が良いのだな』

あ。

あまりの衝撃に忘れてた。
いじけモード真っ最中でした。

『え? あ、ちがっ……』

ああ、でも。
直視できない‘これ’は……。

『見るのも嫌か。人間は皆、我のこの姿を眼にすると顔を伏せるな』

そりゃ~、まぁ。
そうでしょうね。

この顔は駄目だよ。
はっきり言って、怖い。

すごく、怖い。

無表情なのだ。
あるはずのものが、無い。

いじけたことばかり言っているのに、眉1つ動かない。
それは、精巧に作られた彫像のようで……。

真珠のような長い髪に縁取られた、白皙の美貌。
切れ長の眼は人間にはありえない黄金。
完璧すぎて、冷たい印象しかない。

冷酷な美。

人間らしさやあたたかみの全く無い……。
これ、が……生きて動く? 
   
『私……私は』

ハクちゃんに視線を戻した。
かなり頑張って。
気を抜くと、視線を脇へ逃がしてしまう。

『ダルフェは我の容姿が人間に好かれるものだと言う。だが、我はそうは思えない。昔、我のこの姿を化け物と罵った者もいる。悪魔と叫んだ者もいる』

化け物。
悪魔。

『りこの前では二度と人型にならぬと誓うから。一度だけ』

外套の間から白く長い腕現れ、私にむかって伸ばされた。

『もう一度だけ、抱きしめさせてくれ。小竜の我では不可能だから』

ハクちゃん。

ハクちゃん!
私……!
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