四竜帝の大陸【青の大陸編】
この3人は、考えるだろう。
<監視者>がわざわざ人型で現れた意味と、理由を。
答えには辿りつけないのに、考える。

「まるで……<白金の悪魔>……あの方は……」
 
<監視者>に『生きろ』と言われた皇太子。
この男は逃げ道を塞がれ、唯一楽になる術を奪われた。
舅殿が……セレスティスがその筋に<監視者>の意思をうまく流すことで、この皇太子を暗殺する者もじきにいなくなるだろう。
もう誰も、この皇太子を殺さない……殺せない。
こいつは『生かされる』のだから。

王宮術士の少女は姫さんに『いつか手紙が送れる』という希望を与え、あの子の持つ家族への罪悪感を……罪の意識を軽減させるため、存在そのものを旦那に利用されている。

誰も口にはしないが、誰もが異界に手紙を送るなんて『無理』だと感じているし、本人も本心では必ず出来るなんて、おめでたい考えは無いはずだ。
そして、記録と記憶を持つ魔女であるこの女は……。
魔女閣下は車椅子を器用に操り、皇太子の傍へと寄って硬く握られた右手へと触れた。

「ダルド殿下、セイフォンへ帰りましょう。ここで私達がすべき事は、出来ることはもう何も無いのです」
「セシー……」

ふ~ん、この魔女は俺が考えてた以上に賢い女だねぇ。
でもねぇ、残念。
あんたは今までの魔女達から継いだの記憶のせいで、その賢さがいろいろ邪魔をしているんだよ。

閣下は考えすぎだ。
この旦那の行動は、単純明快。
あれは簡単に言えば、ちょっとした嫌がらせみたいなもんだ。
だが、こいつらにはそれが分からない。
……まぁ、姫さんの様子次第で方針をころっと変えて、この連中を消しちまうつもりだったんだろうが。

「なるほどねぇ。まぁ、仕方ないっつーか……」

舅殿の言うように、旦那がこの皇太子を嫌う理由は嫉妬心だ。
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