四竜帝の大陸【青の大陸編】
「ジリ坊、ついでにテル爺ちゃんの分もそれで買って来てくれるか? お釣りはお駄賃だ」
「ギュ? ギュギョン! テルぢぃ~、ちゃっちゃ!」
ジリ君は尾を左右に振りながら、元気良くうなずいた。
彼の鱗は青みがかったグレーで1枚1枚は半透明でそれが重なり合い、細長い体全身を覆っている。
ちょこんとついていた短い手足がなんともラブリーで、大きなお口もチャームポイントなのです。
「スキッテル。買い物の代金よりお駄賃が多いなんて、変だわ。ジリギエ、今此処でスキッテルに返しなさい」
カイユさんは膝の上で嬉しそうにコインを握り締めているジリ君を見ながら、そう言った。
「ギィギュン~。かか……テルぢぃ~」
ジリ君はダルフェさんと同じ色の瞳を真ん丸くして、カイユさんとスキッテルさんを交互に見た。
「たまにはいいじゃないか、カイユちゃん」
毛先が斜め上にはねている真っ白太い眉と対照的に、つるりと剃りあげられた頭部をぽりぽりとかきながら言うスキッテルさんの首には、亡くなった奥さんの牙と鱗で作ったという個性的なデザインのネックレス。
初めて会ったとき、象牙色の牙を指先で優しく撫でながら『紹介』してくれた。
---俺のリセータです。とても綺麗で最高に美しいでしょう?
その時の彼の顔にあったのは悲しみではなく、溢れ出すような愛情だった。
彼も、先に亡くなった奥さんも。
とても幸せだったのだと……今でもその幸せは続いているのだと、スキッテルさんの誇らしげな笑顔が言っているような気がした。
「駄目」
カイユさんはジリ君の胴を両手で掴んで立ち上がり、作業場の間仕切りに寄りかかっていたスキッテルさんに歩み寄った。
「ジリギエ。自分の手で返しなさい」
「かか……テルぢぃ、ギギギュ!」
数秒間、ぎゅっと目をつぶってから。
ジリ君はスキッテルさんに向けて左手を伸ばした。
その手には、コインが2枚。
「……同じだなぁ」
スキッテルさんの笑顔が深くなった。
ジリ君からコインを受け取り、右の手のひらに乗せて転がしながら。
「ミルミラちゃんも“駄目”って、言ったんだよ」
嬉しそうに、言った。
「母様も? ……スキッテル、私……私も母様のような母親になれるかしら?」
カイユさんはジリ君の身体を胸に強く押し付けるように、両腕で抱いた。
水色の瞳が言葉以上の問いを帯び、答えを求めてスキッテルさんの暗褐色の目を真っ直ぐに見た。
「なれるかだって? 君はもう、母親になっているだろう?」
「そうね、そう……私は……私も、母親になったわね」
スキッテルさんの言葉を聞いて、カイユさんの表情がやわらかいものに変わった。
「ギュ? ギュギョン! テルぢぃ~、ちゃっちゃ!」
ジリ君は尾を左右に振りながら、元気良くうなずいた。
彼の鱗は青みがかったグレーで1枚1枚は半透明でそれが重なり合い、細長い体全身を覆っている。
ちょこんとついていた短い手足がなんともラブリーで、大きなお口もチャームポイントなのです。
「スキッテル。買い物の代金よりお駄賃が多いなんて、変だわ。ジリギエ、今此処でスキッテルに返しなさい」
カイユさんは膝の上で嬉しそうにコインを握り締めているジリ君を見ながら、そう言った。
「ギィギュン~。かか……テルぢぃ~」
ジリ君はダルフェさんと同じ色の瞳を真ん丸くして、カイユさんとスキッテルさんを交互に見た。
「たまにはいいじゃないか、カイユちゃん」
毛先が斜め上にはねている真っ白太い眉と対照的に、つるりと剃りあげられた頭部をぽりぽりとかきながら言うスキッテルさんの首には、亡くなった奥さんの牙と鱗で作ったという個性的なデザインのネックレス。
初めて会ったとき、象牙色の牙を指先で優しく撫でながら『紹介』してくれた。
---俺のリセータです。とても綺麗で最高に美しいでしょう?
その時の彼の顔にあったのは悲しみではなく、溢れ出すような愛情だった。
彼も、先に亡くなった奥さんも。
とても幸せだったのだと……今でもその幸せは続いているのだと、スキッテルさんの誇らしげな笑顔が言っているような気がした。
「駄目」
カイユさんはジリ君の胴を両手で掴んで立ち上がり、作業場の間仕切りに寄りかかっていたスキッテルさんに歩み寄った。
「ジリギエ。自分の手で返しなさい」
「かか……テルぢぃ、ギギギュ!」
数秒間、ぎゅっと目をつぶってから。
ジリ君はスキッテルさんに向けて左手を伸ばした。
その手には、コインが2枚。
「……同じだなぁ」
スキッテルさんの笑顔が深くなった。
ジリ君からコインを受け取り、右の手のひらに乗せて転がしながら。
「ミルミラちゃんも“駄目”って、言ったんだよ」
嬉しそうに、言った。
「母様も? ……スキッテル、私……私も母様のような母親になれるかしら?」
カイユさんはジリ君の身体を胸に強く押し付けるように、両腕で抱いた。
水色の瞳が言葉以上の問いを帯び、答えを求めてスキッテルさんの暗褐色の目を真っ直ぐに見た。
「なれるかだって? 君はもう、母親になっているだろう?」
「そうね、そう……私は……私も、母親になったわね」
スキッテルさんの言葉を聞いて、カイユさんの表情がやわらかいものに変わった。