四竜帝の大陸【青の大陸編】
「ちくしょうっ! 俺様を出し抜いて、密輸した奴がいるってことかっ」
「魔薬(ハイドラッガー)……私は初めて聞く名です。しかも密輸なんてっ、あれだけ徹底して管理を……陛下、どうなさいます?」

それを投与した術士を戦に大量投入した結果、多くが死んだ。
戦ではなく、薬の副作用で。
そのため<黒の大陸>では、術士が絶滅寸前だ。

「あ~あ。魔薬撲滅に熱心な<黒>の爺さんが知ったら、憤死もんだなぁ。ま、どうせもうすぐ死んじまうけど。旦那、皇女を捕らえて調べますか?」

<黒>の息子の死には。
魔薬が関わっている、と。

「否。捨て置け」

以前、<赤>が言っておったな。
我は詳細は知らぬが。
 
「所詮、いかに足掻こうと、藻は昆布にはなれぬのだから」

もっとも。
藻が昆布になりたいなどと、考えるかどうか。
我には分からぬし、興味も無い。

「いいかげん海草から放れろ、じじい! つーか、藻って海草なのか?」
「……ダルフェ。我の問いに答えよ」
「なんっすか?」
「この海綿なるものも海草なのか? 違うのか? これは何なのだ?」

海綿を握った手を掲げて訊くと。

「……なんで旦那はこうなんだかなぁ。はぁあああ~……」

返ってきたのは、溜め息だった。
我の大切なりこに使用する、この海綿の正体のほうが。
皇女が魔薬を使ったかどうかより。
四竜帝等の探す『導師』の正体より、我には重要なのだがな。
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