四竜帝の大陸【青の大陸編】
毛足の長い緋色の絨毯の上を、黒革の長靴が移動する。
「……ふ~ん、シュノンセルとは違うタイプの美人だねぇ。まぁ、あの女帝とあんたじゃ格が違うけど」
竜騎士専用のそれは戦闘用に作られたものであり、通常のモノより数倍硬く重い。
使い様によっては武器にもなる、特殊な品物だ。
だが、ダルフェが身につけると黒い猫のようにしなやかで軽く見えた。
蜥蜴蝶を素材にした詰襟の青い制服の腰には、細身の剣。
それに添えられた手には白い手袋。
「……シュノンセルとは、どなた?」
皇女はダルフェを見上げ、問うた。
硬い声だった。
「<赤の大陸>にいた、旦那の女だよ。あんたと違って優秀な術士でね、<監視者>に“殺されることが出来た”んだ」
「そうですか……つまりその方は、自らの意思で異界の生物をこちらへ落とし、処分対象となられたのですわね? 確かに“優秀”ですわ」
我はシュノンセルを<処分>した。
我がこの手で殺したのに、それはシュノンセルの『自殺』だったのだとブランジェーヌは言っていた。
息子を足蹴にしながら、シュノンセルは我の情人だったと言っていたな……。
<赤>も<青>も、情人やら愛人という呼称に何故拘るのだろう。
あれもこれも、女は女。
我と交わっただけの女という生き物であり、以下でも以上でも無いのだ。
「俺が見てきた“お手付き”の女達の中じゃ、見た目も中身もシュノンセルがやっぱり一番っすねぇ~。 ったく、なんであんな簡単に殺しちまうかねぇ……あんな良い女、もったいない」
皇女を見下ろし、口の端をあげて言うダルフェに皇女の眉が微かに動く。
それ以上変化は無く、それだけだった。
傅かれることに慣れた皇女だが、ダルフェの態度や言葉に不満を露にするほど愚かではないようだった。
メリルーシェの第二皇女であることは、竜騎士にとっては頭を垂れる理由にならぬことを理解しているのだろう。
皇女は乳白色の衣装の布の間……腰のドレープ部分に右手を差込み、白い絹布に包まれたものを取り出した。
「……ふ~ん、シュノンセルとは違うタイプの美人だねぇ。まぁ、あの女帝とあんたじゃ格が違うけど」
竜騎士専用のそれは戦闘用に作られたものであり、通常のモノより数倍硬く重い。
使い様によっては武器にもなる、特殊な品物だ。
だが、ダルフェが身につけると黒い猫のようにしなやかで軽く見えた。
蜥蜴蝶を素材にした詰襟の青い制服の腰には、細身の剣。
それに添えられた手には白い手袋。
「……シュノンセルとは、どなた?」
皇女はダルフェを見上げ、問うた。
硬い声だった。
「<赤の大陸>にいた、旦那の女だよ。あんたと違って優秀な術士でね、<監視者>に“殺されることが出来た”んだ」
「そうですか……つまりその方は、自らの意思で異界の生物をこちらへ落とし、処分対象となられたのですわね? 確かに“優秀”ですわ」
我はシュノンセルを<処分>した。
我がこの手で殺したのに、それはシュノンセルの『自殺』だったのだとブランジェーヌは言っていた。
息子を足蹴にしながら、シュノンセルは我の情人だったと言っていたな……。
<赤>も<青>も、情人やら愛人という呼称に何故拘るのだろう。
あれもこれも、女は女。
我と交わっただけの女という生き物であり、以下でも以上でも無いのだ。
「俺が見てきた“お手付き”の女達の中じゃ、見た目も中身もシュノンセルがやっぱり一番っすねぇ~。 ったく、なんであんな簡単に殺しちまうかねぇ……あんな良い女、もったいない」
皇女を見下ろし、口の端をあげて言うダルフェに皇女の眉が微かに動く。
それ以上変化は無く、それだけだった。
傅かれることに慣れた皇女だが、ダルフェの態度や言葉に不満を露にするほど愚かではないようだった。
メリルーシェの第二皇女であることは、竜騎士にとっては頭を垂れる理由にならぬことを理解しているのだろう。
皇女は乳白色の衣装の布の間……腰のドレープ部分に右手を差込み、白い絹布に包まれたものを取り出した。