四竜帝の大陸【青の大陸編】
お客様、しかも元愛人(元って言わせて!)の前で普段通りになんて!

「……トリィ様。1人がけの椅子の場合、ヴェルヴァイド様の膝に座っていただきますよ?」

ひっ!?
お客様(しかも元カノというか、元愛人!)の前で、ハクちゃんの膝に座れと!?

「えぇ~っ、そんなの無理っ……っ!?」

ハクちゃんに座るって……うわっ!?
なんで思い出しちゃうのよ、私ってば! 
今朝、おはようの挨拶(キス)をしてたら、何故かあれよあれよと突き進んでしまい……うわっ、うわわわっ~今ここで思い出しちゃ駄目よ!

「あああああのっ! 今朝はいつの間にやらあの態勢というか、状態になってたわけでしてっ! けっして自分から、ハクちゃんのお膝にのったわけじゃなくてっ!」 

今朝は書き取りテストに備えるために、いつもより2時間早く起きたのに……勉強では無いことに時間を使ってしまった結果、また合格点を取れなかったわけでしてっ!

「トリィ様? どうなさいまし……」

「あ、え、いいです、それでいいです! ラブラブなラブソファーに、喜んで座らせていただきます!」

真っ赤であろう顔をカイユさんの視線から両手で隠し、かくかくと頭部を上下に動かして頷くしかなかった。
 

「りこ」

 
沸騰しそうな顔に、すっかり馴染んだひんやり感。
ハクちゃんの、体温。

「りこ」

ハクちゃんは私の両頬に大きな手を添えて上向かせ、額にキスを1つ。

「お帰りなさい、ハクちゃん……きゃっ!?」

ひょいっと抱き上げられ、黒いレカサを着たハクちゃんの腕に座らされた。
うう、またお子様抱っこだ。
お姫様抱っこよりお互いの顔が近いから、最近のハクちゃんはこのお子様抱っこがお気に入りなんだよね……。

「なぜ踊っていたのだ? 珍妙な動きであったな」

頭部だけじゃなく上半身までも動かし、熱くなった顔を両手を開いてぱたぱたと扇ぐようにしつつ、カイユさんがラブラブ演出しようとしているソファーの前で立ち往生(?)している私を、ハクちゃんは“踊っている”と思ったようだった。

「踊り? これはそのっ……あっ!」

ハクちゃんの後ろに立つ華やかな人影を発見して、彼の首に回した両腕に思わず力が加わった。
 こちらを見上げる美女としっかりと目が合ってしまい、逸らすに逸らせ……結果、お互いを凝視することになって、気まずい空気が漂った。

「……御機嫌よう、つがいの君」

さ、さすが皇女様。
どうしていいか分からずに固まってしまった私とは違い、さっと切り替えて笑顔でご挨拶できるなんて!

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