四竜帝の大陸【青の大陸編】
「こ、こんにち……はっ!?」

視線をずらした私の目に飛び込んできたのは……うわわっ!
今日はこの数日で一番寒いのに、お胸がぐぐっと露出した際どいラインで……でも、容姿がノーブルなせいかちっとも下品じゃない。

ウエスト部分に金糸で大きな牡丹に似た花が刺繍された光沢のあるミルキーホワイトのプリンセスラインドレス、真珠でできた髪飾り、胸元には大粒のルビーが輝く透かし細工の金の首飾り。
皇女様は、本日もなんて綺麗……ああ、同性の私ですら見蕩れるほど美しい。

私に向けられた美貌に浮かぶ笑みには、昨日は無かった儚さが……ここへ来る前に、ハクちゃんに別れ話をされたから?
その儚さが彼女を昨日より、さらに美しく見せていた。

「あの、私っ……ハクちゃん、おろして!」

当然の要求をハクちゃんはスルーして、私を抱いたまま皇女様の方へと身体の向きを変え。

「皇女よ、我のりこは愛らしいだろう?」

などど、目と脳が腐れていると思われてもしょうがない発言をしてくださった。

「ちょっ!? ハクちゃん!」 

こんな美人から見たら私なんてどう考えたって底辺容姿なのに、あああ愛らしいとか言いましたか!?
きゃあああ~っ、なに言ってんのよぉおお!

「…………」

ほら、皇女様のお口が呆れてちょこっと開いちゃったじゃないの!

「我のりこは綺麗なモノが好きなのだ。りこ、りこ! どうだ? 皇女は昨日と同じように“綺麗”か? “綺麗”が不足しておらぬか?」
「ハクちゃん? 綺麗なモノが好きとか不足とか、また変なこと言って! もうっ、とにかくおろしてよ!」
「……わかった」

真珠色の髪を軽くひっぱって抗議をすると、意外にもハクちゃんはすんなりと私を床へ立たせてくれた。

「ハクちゃんはここに座ってて」

私はハクちゃんの背を押してカイユさんの用意してくれたソファーへ誘導し、座ってもらうことに成功した。
あ、皇女様にも座ってもらって、お茶を……え?
無言で私達を見ていたカイユさんが、腰の刀に手を添えたまま皇女様へと歩み寄り……。

「メリルーシェの第二皇女。もしお前が術式を使おうとしたら、私はその首を落とす。陛下にもご許可をいただいている」

その冷たい声音に、背筋がぞくりとした。

「カ……イユ!?」

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