四竜帝の大陸【青の大陸編】
「……これは、転移を使ったのだ」
「なっ! じゃあ、姫さんはっ」
俺は理解した。
何故、カイユが姫さんは殺されたのだと言ったのか。
「なんてこった……」
転移は術式の中で最も高度であり、特殊なものだ。
リスクも桁外れに高い。
旦那が『藻』認定したレベルの皇女が姫さんを……人間を転移した場合、それは……。
肉体が少々いかれちまっても、姫さんには強い再生能力がある。
だが。
心臓が潰れていたり、頭が落ちていれば当然死んでいる。
カイユは……カイユは旦那が手を抜いて転移させた時の俺の状態を見ている。
だから殺されたと言ったんだ。
魔薬を使ったとはいえ、藻レベルの術士に転移させられた姫さんが無事でいるはずがないと……俺は<色持ち>だったうえ、処置が早く適切だったから助かった。
すぐに溶液を準備できるのは、竜帝の関連施設でもごく一部だ。
姫さんは目玉の色も変わってしまったし、普通とは言い難い身体にされちまってるみたいだが一応人間で……。
旦那の手前、口には出せねぇけど絶望的だ。
「……干し肉では、脳も使い物にならぬ」
皇女だったモノを、旦那は無造作に後方へと放り投げた。
姫さんの気に入りの池の縁に、それはボロ雑巾のように引っかかった。
豪華なドレスと宝飾品が、浮き出た骨に引っかかるようにして皇女だったモノを生前以上に飾り立てていた。
「使い物って……それって、転移先が探れなかったってことっすね?」
俺はカイユを背にかばうようにして、旦那と向き合った。
旦那に感じた困惑と不安が膨張し、破裂しそうなほど膨れ上がってきた。
増した困惑と不安は、目を逸らしたいモノへと変化を始めている。
それは『恐怖』。
この場から逃げ出す気力も一瞬で喰らい尽くしてしまうほどの……。
割れたガラスの壁は鋭利な刃物のように先を尖らせ、外から吹き込む風を切り込む。
その風に、真珠色に赤を纏わせた髪を舞わせた旦那が。
「…………ッ」
膝を着いた。
地に吸い込まれるかのように、両膝を着いた。
「なっ! じゃあ、姫さんはっ」
俺は理解した。
何故、カイユが姫さんは殺されたのだと言ったのか。
「なんてこった……」
転移は術式の中で最も高度であり、特殊なものだ。
リスクも桁外れに高い。
旦那が『藻』認定したレベルの皇女が姫さんを……人間を転移した場合、それは……。
肉体が少々いかれちまっても、姫さんには強い再生能力がある。
だが。
心臓が潰れていたり、頭が落ちていれば当然死んでいる。
カイユは……カイユは旦那が手を抜いて転移させた時の俺の状態を見ている。
だから殺されたと言ったんだ。
魔薬を使ったとはいえ、藻レベルの術士に転移させられた姫さんが無事でいるはずがないと……俺は<色持ち>だったうえ、処置が早く適切だったから助かった。
すぐに溶液を準備できるのは、竜帝の関連施設でもごく一部だ。
姫さんは目玉の色も変わってしまったし、普通とは言い難い身体にされちまってるみたいだが一応人間で……。
旦那の手前、口には出せねぇけど絶望的だ。
「……干し肉では、脳も使い物にならぬ」
皇女だったモノを、旦那は無造作に後方へと放り投げた。
姫さんの気に入りの池の縁に、それはボロ雑巾のように引っかかった。
豪華なドレスと宝飾品が、浮き出た骨に引っかかるようにして皇女だったモノを生前以上に飾り立てていた。
「使い物って……それって、転移先が探れなかったってことっすね?」
俺はカイユを背にかばうようにして、旦那と向き合った。
旦那に感じた困惑と不安が膨張し、破裂しそうなほど膨れ上がってきた。
増した困惑と不安は、目を逸らしたいモノへと変化を始めている。
それは『恐怖』。
この場から逃げ出す気力も一瞬で喰らい尽くしてしまうほどの……。
割れたガラスの壁は鋭利な刃物のように先を尖らせ、外から吹き込む風を切り込む。
その風に、真珠色に赤を纏わせた髪を舞わせた旦那が。
「…………ッ」
膝を着いた。
地に吸い込まれるかのように、両膝を着いた。