四竜帝の大陸【青の大陸編】
ダメ、首だから目で確認できない。
恐る恐る触ってみると、硬い革と金属の止め具の感触。
これ……犬の首輪に似てるかもしれない。
やだ、これなんなの?
この人達、なんで私にこんなモノをっ!?
「あ、服? ……まぁ、確かにえらく高そうだ。それにこのネックレスって、真珠じゃねぇか!? 人間に見えるって、どういう意味だよ? 角が生えてるわけでもねぇしよ。なぁなぁ、こいつの服とネックレス、街で換金しようぜ!」
「換金? 本当に無知な男だな。これは既婚の竜族の雌がよく着るモノで、肌の露出を最小限に抑えているんだ。竜族の雄は妻の肌を他人に見られるのを、とても嫌がるからな」
「は? 竜族~!? このちんまい女がか? どう見たって人間だぜ、竜族の雌ってでかいんだろう?」
頭上で交わされる会話に、心臓の音が頭の中でどんどん大きくなってくる。
女神さまが用意してくれたドレスの奥で、足が震えて立ち上がれない。
「人間だってそれぞれ身長差がある。同じように竜族だって、個体差があるのさ。それにこの目をよく見ろ、確かに金色の目の人間も稀にいるが、この娘の色は人間の持つものじゃない」
声を出せないなんて……ハクちゃんを呼べない!
どうしよう!?
きっと、この首輪のせいで声が出ないんだ。
「ふ~ん、そうなんだ。俺は竜族を見たことねぇし、あいつらとは商売の付き合いもねぇから知らなかった」
この人達……背の低い人のほうが、竜族に詳しいみたい。
でも、私のこの目がハクと……<監視者>と同じだってことは、知らないんだ。
ハクの瞳を、この人は知らない。
「だろうな。低俗で無知なお前のような闇市の商人が竜族に関わることなんて、普通は一生無い」
「……ったく、嫌な奴だな」
どうしよう、どうしよう!?
頭の中で姿を思い浮かべて呼んでも、ハクから返事が無い。
彼には私の“声”が聞こえていない。
ああ、ダメ……念話は私の能力じゃなく、ハクちゃんの能力だもの。
彼が竜体でいてくれて、なおかつ“意識”を向けてくれないと届かない。
それか……考えたくないけれど。
彼の念話が届かないほど、私は遠くに来てしまったの?
「ははっ、お前ほどじゃないさ。輪止をしてるから竜体になって暴れることも出来ない。声も出ないから、つがいの雄を呼ぶこともできやしない。既婚の雌が帝都から遠く離れたここで1匹でうろうろしてるなんて、有り得ない。何か問題が起きてつがいの雄とはぐれただけだろう。近くに雄がいるはずだ、『声』を使って雄を呼ばれちゃやばい。竜族は基本的には大人しい種族だが、雄はつがいのこととなると途端に凶暴になるからな」
ハクは絶対に、私を探してくれている。
きっと、とても心配している。
恐る恐る触ってみると、硬い革と金属の止め具の感触。
これ……犬の首輪に似てるかもしれない。
やだ、これなんなの?
この人達、なんで私にこんなモノをっ!?
「あ、服? ……まぁ、確かにえらく高そうだ。それにこのネックレスって、真珠じゃねぇか!? 人間に見えるって、どういう意味だよ? 角が生えてるわけでもねぇしよ。なぁなぁ、こいつの服とネックレス、街で換金しようぜ!」
「換金? 本当に無知な男だな。これは既婚の竜族の雌がよく着るモノで、肌の露出を最小限に抑えているんだ。竜族の雄は妻の肌を他人に見られるのを、とても嫌がるからな」
「は? 竜族~!? このちんまい女がか? どう見たって人間だぜ、竜族の雌ってでかいんだろう?」
頭上で交わされる会話に、心臓の音が頭の中でどんどん大きくなってくる。
女神さまが用意してくれたドレスの奥で、足が震えて立ち上がれない。
「人間だってそれぞれ身長差がある。同じように竜族だって、個体差があるのさ。それにこの目をよく見ろ、確かに金色の目の人間も稀にいるが、この娘の色は人間の持つものじゃない」
声を出せないなんて……ハクちゃんを呼べない!
どうしよう!?
きっと、この首輪のせいで声が出ないんだ。
「ふ~ん、そうなんだ。俺は竜族を見たことねぇし、あいつらとは商売の付き合いもねぇから知らなかった」
この人達……背の低い人のほうが、竜族に詳しいみたい。
でも、私のこの目がハクと……<監視者>と同じだってことは、知らないんだ。
ハクの瞳を、この人は知らない。
「だろうな。低俗で無知なお前のような闇市の商人が竜族に関わることなんて、普通は一生無い」
「……ったく、嫌な奴だな」
どうしよう、どうしよう!?
頭の中で姿を思い浮かべて呼んでも、ハクから返事が無い。
彼には私の“声”が聞こえていない。
ああ、ダメ……念話は私の能力じゃなく、ハクちゃんの能力だもの。
彼が竜体でいてくれて、なおかつ“意識”を向けてくれないと届かない。
それか……考えたくないけれど。
彼の念話が届かないほど、私は遠くに来てしまったの?
「ははっ、お前ほどじゃないさ。輪止をしてるから竜体になって暴れることも出来ない。声も出ないから、つがいの雄を呼ぶこともできやしない。既婚の雌が帝都から遠く離れたここで1匹でうろうろしてるなんて、有り得ない。何か問題が起きてつがいの雄とはぐれただけだろう。近くに雄がいるはずだ、『声』を使って雄を呼ばれちゃやばい。竜族は基本的には大人しい種族だが、雄はつがいのこととなると途端に凶暴になるからな」
ハクは絶対に、私を探してくれている。
きっと、とても心配している。