四竜帝の大陸【青の大陸編】
竜騎士が多くの人間を……それを嘘だと思うことが、私にはできない。
カイユさんは、私に言ったもの。
==私のこの手は、多くの人間を殺した手なんです。
竜騎士は……必要なら人間を傷つけるし、命も奪うのだと私は教えられた。
==人間共は私を凶悪無慈悲な雌竜と恐れ、嫌悪します。それは私にとって最高の賛美。私は望んで刀を取り、喜びのなかで殺戮を行うのです。私は……カイユはそういう‘生き物‘なのです。
それでも、私は。
カイユさんを怖れることなど、嫌いになることなど出来ない。
今の私が怖れるのは、嫌悪するのは。
子供を奪う返しに来た竜族に殺されてしまった人達を『もったいない』と言う、この人の心。
この人は、人が殺されたこと自体はなんとも思っていない。
この人にとっては竜族だけじゃなく、人間も商品であって……。
もし、誤解が解けて私が竜族じゃなく人間だと分っても。
「おい、先に帰って馬を持って来てくれ。私はこれから嫁を貰う若いお前とは体力が違うんだ。この荷物を持つのはいいが、皆の所まで歩くのは無理だ」
「しょうがね~なぁ、わかったよ。じゃあ、また後でな!」
彼は、彼等は私を助けない。
同じように、競りに出して売るだけ。
「ああ、早めに頼む」
竜族だろうと、人間だろうと……。
――…………。
私はこの世界のことが知りたくて、本を読んだ。
竜帝さんが用意してくれた本には他の大陸の気候や風土、美しい自然や綺麗な町並みが描かれていた。
丁寧に描かれ彩色された挿絵を見ながら、これからのハクとの暮らしに想いをはせた。
<青の大陸>から他の大陸に移るのは確かに不安だったけれど、ハクやカイユさん達と<黒の大陸>に移動する道中を『旅行』として楽しみだと……楽しもうと考えていた、思っていた。
――私……私は……。
握りこんだ真っ赤に染まった右の手は、乾いた血液が皮膚を……毛穴を押さえ込むような嫌な感触がした。
カイユさんは、私に言ったもの。
==私のこの手は、多くの人間を殺した手なんです。
竜騎士は……必要なら人間を傷つけるし、命も奪うのだと私は教えられた。
==人間共は私を凶悪無慈悲な雌竜と恐れ、嫌悪します。それは私にとって最高の賛美。私は望んで刀を取り、喜びのなかで殺戮を行うのです。私は……カイユはそういう‘生き物‘なのです。
それでも、私は。
カイユさんを怖れることなど、嫌いになることなど出来ない。
今の私が怖れるのは、嫌悪するのは。
子供を奪う返しに来た竜族に殺されてしまった人達を『もったいない』と言う、この人の心。
この人は、人が殺されたこと自体はなんとも思っていない。
この人にとっては竜族だけじゃなく、人間も商品であって……。
もし、誤解が解けて私が竜族じゃなく人間だと分っても。
「おい、先に帰って馬を持って来てくれ。私はこれから嫁を貰う若いお前とは体力が違うんだ。この荷物を持つのはいいが、皆の所まで歩くのは無理だ」
「しょうがね~なぁ、わかったよ。じゃあ、また後でな!」
彼は、彼等は私を助けない。
同じように、競りに出して売るだけ。
「ああ、早めに頼む」
竜族だろうと、人間だろうと……。
――…………。
私はこの世界のことが知りたくて、本を読んだ。
竜帝さんが用意してくれた本には他の大陸の気候や風土、美しい自然や綺麗な町並みが描かれていた。
丁寧に描かれ彩色された挿絵を見ながら、これからのハクとの暮らしに想いをはせた。
<青の大陸>から他の大陸に移るのは確かに不安だったけれど、ハクやカイユさん達と<黒の大陸>に移動する道中を『旅行』として楽しみだと……楽しもうと考えていた、思っていた。
――私……私は……。
握りこんだ真っ赤に染まった右の手は、乾いた血液が皮膚を……毛穴を押さえ込むような嫌な感触がした。