四竜帝の大陸【青の大陸編】
『りこの存在を知る者は全て消せ。他国の者も』

<白金の悪魔>の言葉に王子が暴れだした。
そりゃ、そうだろう。
虐殺。
そんな事を聞かされたらなぁ。

『んっ!……ぐっ!!』

旦那に咽喉を掴まれているから、言いたいことも言えん状態だがねぇ。

『ヴェルヴァイド様! おやめくださ……!』

魔女閣下が、床に崩れ落ちた。
旦那が意識を‘落とし’たのか?

俺には旦那を止められない。

『我は以前に言ったはずだ。楽には殺さぬと』

それができるのはつがいである、姫さんだけだ。

『四肢をもぎ、目鼻を抉れば我の気分も多少は晴れるやもしれんな』

連れて……間に合わない!




『ふざけんなっ! この色ボケじじい!!』



同時に、青い閃光。
ダルド王子の身体が、石の床に落ちる。

『ぐはっ……げほげほ!』

激しく咳き込む王子は咽喉に手を当てようとして、硬直した。
無理も無い。
旦那の腕が、首にくっついたままだからな。

『陛下……ぎりぎりでしたね』

俺は固まってしまった王子から、旦那の腕を外してやった。
肘から切断された旦那の腕からは血の一滴すら、流れていない。
精巧に作られた人形の腕のようだった。

『で。これどうします? 新しいの再生すんなら捨てときますが』
『んなもん、ほっとけ! おい! ヴェル、貴様よくも俺様をこけに……ぐわ!』

 小さな青い竜は床にめり込んだ身体をさすりながら、短い2本の足で立ち上がり……。

『青の竜帝である俺様になんてことしやがる! このじじ……ぎゃっ!』

 旦那は<青の竜帝>を長い足で踏みつけながら俺に残った手を差し出し、言った。

『それはりこに触れた腕だ。変えはきかぬ。使うからよこせ』

俺が【それ】を投げると旦那は残った腕で受け取り、切断面を眺めた。

『ふむ。綺麗だな。<青>よ、褒めてやろう』

白い肌とは対照的な赤い舌で切断面を舐め、肘をもとの場所にくっつけた旦那は感覚を試すかのように指を動かしながら青い竜を見下ろした。

『お前が帝都から出向くなどあまりないことだ。セイフォンで問題でも?』

旦那。

あんたが天然なのは、知っていますが。
しかし、しか~し!

『……問題はお前に決まってるわ!』

足元で叫ぶ陛下に俺は同情した。

いろんな意味で。
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