四竜帝の大陸【青の大陸編】
112
「陛下」
凛とした声が、電鏡の間に響く。
それは雲間から射す光のように澄み、刃先のように鋭い。
使用者の去った大型伝鏡は闇に同化し、先程まで旦那の姿を映していた赤の竜帝用の大型電鏡も鏡面が曇り、揺らいで徐々に暗くなっていく。
カイユは粉々になった電鏡にまみれ、床に座り込んでいる俺を一瞥すると目を細めた。
父親であるセレスティスと同じ色の瞳には、揺るがぬ決意。
「ハニー? どうし……」
俺の問いを聞く気も答える気もないようで、その視線はすぐに青の麗人へと戻る。
「陛下」
「……カイユ?」
陛下へとカイユは歩み寄り、両膝をついた。
「陛下」
カイユは青の瞳を見上げ、言った。
「陛下。カイユは貴方の竜騎士です」
「カ、イ……ユ?」
陛下は目を見開き、自分を見上げるカイユを凝視する。
カイユは両手の手袋をはずし、丁寧に合わせ折って床へと置いた。
言いながら、手を伸ばす。
「陛下。カイユは貴方の“モノ”です」
儚ささえ感じられる顔に、触れた。
「……モノなんて、そんなふうに言うな。カイユ」
指先が触れた口元が、微かに震える。
カイユの指に誘われるように身をかがめた陛下を慈しむように、その手は頬を撫で包み込む。
「我が主よ、我が君よ。貴方の僕に、カイユに命じてください」
「カイユ?」
陛下の瞳が、長い睫と共に瞬く。
「行くなと仰るならば、私はここに……ずっと、陛下のお側に」
青色と水色が絡まり。
「お、俺はっ…」
海と空が交差する。
「なっ!?」
俺は電鏡の欠片を踏み砕きつつ立ち上がった。
「カイユッ、なに言ってんだ!?」
カイユへと歩み寄ようとした俺の足を止めたのは、カイユの手を振り払った陛下の声だった。
凛とした声が、電鏡の間に響く。
それは雲間から射す光のように澄み、刃先のように鋭い。
使用者の去った大型伝鏡は闇に同化し、先程まで旦那の姿を映していた赤の竜帝用の大型電鏡も鏡面が曇り、揺らいで徐々に暗くなっていく。
カイユは粉々になった電鏡にまみれ、床に座り込んでいる俺を一瞥すると目を細めた。
父親であるセレスティスと同じ色の瞳には、揺るがぬ決意。
「ハニー? どうし……」
俺の問いを聞く気も答える気もないようで、その視線はすぐに青の麗人へと戻る。
「陛下」
「……カイユ?」
陛下へとカイユは歩み寄り、両膝をついた。
「陛下」
カイユは青の瞳を見上げ、言った。
「陛下。カイユは貴方の竜騎士です」
「カ、イ……ユ?」
陛下は目を見開き、自分を見上げるカイユを凝視する。
カイユは両手の手袋をはずし、丁寧に合わせ折って床へと置いた。
言いながら、手を伸ばす。
「陛下。カイユは貴方の“モノ”です」
儚ささえ感じられる顔に、触れた。
「……モノなんて、そんなふうに言うな。カイユ」
指先が触れた口元が、微かに震える。
カイユの指に誘われるように身をかがめた陛下を慈しむように、その手は頬を撫で包み込む。
「我が主よ、我が君よ。貴方の僕に、カイユに命じてください」
「カイユ?」
陛下の瞳が、長い睫と共に瞬く。
「行くなと仰るならば、私はここに……ずっと、陛下のお側に」
青色と水色が絡まり。
「お、俺はっ…」
海と空が交差する。
「なっ!?」
俺は電鏡の欠片を踏み砕きつつ立ち上がった。
「カイユッ、なに言ってんだ!?」
カイユへと歩み寄ようとした俺の足を止めたのは、カイユの手を振り払った陛下の声だった。