四竜帝の大陸【青の大陸編】
「とりあえずは、これでいいわ」
カイユは葛篭に最後の荷物を入れ、飛行中に決して開かぬようにしっかりと鍵を閉めた。
「あちらで買い揃えればいいし」
南棟に面した庭に置かれたそれは、陛下が三日前に用意してくれた物だ。
大きさは横幅が俺の背丈ほどあり、水滴のような奇妙な形をしている。
「父様が帝都に帰ってきたら、他の荷も発送手続きしてもらって追加便で……」
大陸間を最高速で竜族が飛行するさいに使用する特殊な物で、輸出入の業務に関わっていない俺は初めて見るものだった。
「あとは、そうね。これをなんとかしなきゃだわ」
指先で髪を摘むと、カイユは南棟二階にある俺達の部屋の窓へと助走もつけず跳ぶ。
猫のようにしなやかに、すべるように開け放した窓から室内へと消えた。
それを追う様に、俺も窓へと跳んだ。
カイユは引き出し一つ一つに象嵌が施されたチェストへと歩み寄り、花形の通し台座の付いた真鍮製の引き手へと手を伸ばす。
「確かここに……」
窓枠に腰掛けた俺は、チェストの引き出しを開けて中にあるものを取り出すカイユの後ろ姿を目でなぞる。
長かったカイユの髪は、首の中ほどから下が無い。
「……」
さらりとした手触り、その感触を味わい愉しみながら愛し合った記憶が脳内に満ちる。
背に流しても、結い上げても美しかった銀の髪。
「…………」
「ダルフェ、この鋏で毛先を揃えてちょうだい。これでは赤の竜帝にお会いできないわ」
不揃いな毛先が、俺の心を逆撫でする。
「あのねぇ、ハニー」
鋏を手にした腕をとり、強引に引き寄せた。
「君は俺を殺す気なのか?」
カイユは葛篭に最後の荷物を入れ、飛行中に決して開かぬようにしっかりと鍵を閉めた。
「あちらで買い揃えればいいし」
南棟に面した庭に置かれたそれは、陛下が三日前に用意してくれた物だ。
大きさは横幅が俺の背丈ほどあり、水滴のような奇妙な形をしている。
「父様が帝都に帰ってきたら、他の荷も発送手続きしてもらって追加便で……」
大陸間を最高速で竜族が飛行するさいに使用する特殊な物で、輸出入の業務に関わっていない俺は初めて見るものだった。
「あとは、そうね。これをなんとかしなきゃだわ」
指先で髪を摘むと、カイユは南棟二階にある俺達の部屋の窓へと助走もつけず跳ぶ。
猫のようにしなやかに、すべるように開け放した窓から室内へと消えた。
それを追う様に、俺も窓へと跳んだ。
カイユは引き出し一つ一つに象嵌が施されたチェストへと歩み寄り、花形の通し台座の付いた真鍮製の引き手へと手を伸ばす。
「確かここに……」
窓枠に腰掛けた俺は、チェストの引き出しを開けて中にあるものを取り出すカイユの後ろ姿を目でなぞる。
長かったカイユの髪は、首の中ほどから下が無い。
「……」
さらりとした手触り、その感触を味わい愉しみながら愛し合った記憶が脳内に満ちる。
背に流しても、結い上げても美しかった銀の髪。
「…………」
「ダルフェ、この鋏で毛先を揃えてちょうだい。これでは赤の竜帝にお会いできないわ」
不揃いな毛先が、俺の心を逆撫でする。
「あのねぇ、ハニー」
鋏を手にした腕をとり、強引に引き寄せた。
「君は俺を殺す気なのか?」